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第四部

知の開放


工学系研究科

工学系研究科の展示は素材というキーワードに着目した。古く、東京大学が産声をあげたころに日本で盛んに採取された輝安鉱は、当時軍需などに役立つ重要な鉱物素材であった。東京大学には世界最大と言われる当時の輝安鉱標本を所蔵しており、仮想展示と実物展示で観覧することが出来る。

多様な製品が溢れ、多種多様な材料が使われる現代になると、新素材と呼ばれるハイテクノロジーの素材が脚光を浴びている。長く伸びる性質をもつ素材や、高温に耐えるセラミック、とても軽い金属、硬い金属、色のついたステンレスなどさまざまな素材を実物展示している。

またビデオ展示として、オーロラの出来る原理である「磁力線のつなぎかわり」を出展している。

新素材「超合金チップ」 輝安鉱

新素材「超合金チップ」

超硬合金は機械加工に用いられる代表的な切削工具の一つである。切削工具には硬度の高い材料が適しているが、高硬度材料は一般に強度が低い(壊れやすい)という欠点を有している。ここに示した超硬合金は、硬度が極めて高いWC(タングステンの炭化物)粒子を、延性に富むCo合金中に分散させた、硬度そして強度ともに優れた複合材料である。この様なセラミックス(Ceramic)と金属(Metal)の複合材料を一般にサーメット(Cermet)と呼び、切削工具以外にも様々な分野で使用されている。本製品は住友電気工業株式会社で作製した。

輝安鉱

世界最大と言われる輝安鉱標本。
【愛媛県西条市市ノ川鉱山産/総合研究博物館鉱山部門所蔵】

新素材「GaAsウェハー」

新素材「ハニカムセラミックス」

新素材「炭化ケイ素焼結体」

新素材「GaAsウェハー」

半導体材料としては、従来シリコンが、集積回路(IC、LSI)用材料として使用されてきた。化合物半導体の代表格であるガリウム砒素(GaAs)は、バンドギャップが大きいため絶縁性が良く、移動度が大きいため高速や高周波動作が可能、間接遷移型であるため発光効率が高い等の、優れた特性を持っている。だから、超高速演算用集積回路、衛星通信用デバイス、携帯電話用デバイス、等の、シリコンでは出来ないユニークな製品に利用されている。このウエハーは、株式会社ジャパンエナジー社製で、単結晶インゴットから切り出され、研磨されたもので、この上にデバイスのパターンが作られて行く。

新素材「ハニカムセラミックス」

本製品は自動車排ガス浄化用触媒担体として用いられる。この押し出しハニカムは、薄壁で囲まれた多数の貫通孔を有する蜂の巣状の成形体である。耐熱性・耐食性に優れているが、排ガス浄化用触媒担体にはさらに熱ストレスに耐える耐熱衝撃性が要求される。本製品は日本碍子株式会社で作製された。

新素材「炭化ケイ素焼結体」

炭化ケイ素セラミックスは、炭素とケイ素の化合物であり、代表的な高温構造用セラミックスである。特に耐熱性や耐磨耗性に優れており、1500°C以上でも耐える高温部材や摺動部材として用いられている。その用途は、宇宙航空用部材、原子力用部材、自動車エンジン部材などと幅広い。本製品は昭和電工株式会社で作製された。

新素材「カラーステンレス」 新素材「カラーステンレス」

カラーステンレス鋼ステンレス鋼を電解質水溶液中でアノード(十分に高い電位のこと)酸化すると、その表面には、非常に薄い酸化皮膜が形成される。この皮膜は、皮膜表面で反射した光と皮膜/ステンレス鋼界面で反射した光との干渉作用により、着色して見える。膜厚は、電解質や浴電圧によって決まるので、これらを制御することで、目標とする色調を得ている。本製品は新日本製鐵株式会社で作製された。
新素材「超塑性セラミックス」 新素材「超塑性セラミックス」

微細組織を高度に制御することにより、セラミックス材料でも超塑性現象を発現させることが可能となった。本試料は、超塑性変形をさらに改善するために微量のSiO2をジルコニアに添加したものである。微量のSiO2添加により、ジルコニア単体では得ることのできない変形が可能となった。なお、本試料は東京大学の佐久間研究室で開発されたものである。


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