東京大学総合研究博物館 > 古生物 > クランツ標本を含む古生物リファレンスコレクション


クランツ標本を含む古生物リファレンスコレクション (旧地質学教室所蔵標本)
Paleontological Reference Collection including Krantz Specimens


佐々木猛智
Takenori Sasaki


一覧表 画像ギャラリー

かつて理学部地質学教室において研究教育の参照用として集められた化石のコレクションが総合研究博物館地史古生物部門に残されている。分類群は、化石として産出する生物が幅広く集められており、有孔虫、サンゴ、棘皮動物、節足動物(三葉虫類等)、軟体動物(巻貝類、二枚貝類、アンモナイト類)、腕足動物、脊椎動物、植物等を含む。


産地は海外のもの、特にヨーロッパ産が多い。その主要な供給源は、19世紀の有名な標本商であったドイツのクランツ商会である。クランツ標本には A. Krantz と F. Krantz の2世代にわたる標本があり、前者の方が古い。東大の古生物標本は A. Krantz の方が圧倒的に多く、F. Krantz は少数である。また、大半のラベルには A. Krantz in Bonnと書かれており、所在地のボンの地名が印刷されている。稀に Krantz in Berlin と記された標本が存在するが、これはクランツ商会がベルリンからボンに移転する前の時代の標本であることを意味している。


クランツと並んで数が多いのは、ロンドンの James R. Gregory から購入した標本である。コレクションにはイギリス産の化石標本が多数含まれているが、それらの供給源がGregoryである。他には、スイスの Comptoir Minéralogique & Géologique Suisse 由来の標本も少なくない。ヨーロッパ以外では、アメリカの Illinois Geological Survey、ロシアの Université du Moscou のラベルが添付された標本がある。従って、大半が海外産の標本であるが、一部には Kaiseigakko のラベルが入っている。これは、大学の前身であった東京開成学校時代に収集された標本であることを示している。初代教授のナウマンは東京開成学校の時代から地質学の教員として来日しており、Kaiseigakkoのラベルのある海外産の化石標本はナウマンがもたらしたものであると推定される。ナウマンとその後任のブラウンスはドイツ出身であることから、ドイツのクランツ商会由来の標本が多数あることは合点がいくものである。


標本には作成年代の異なる複数のラベルが添付されている。多くの標本には、紙箱の側面に貼られた状態の古いラベルが入っている。このラベルの存在は戦時中の疎開を経験したことを意味している。古生物学の教室は山形県大石田の寺に疎開したが、紙箱のままではかさばるため苦肉の策としてラベルの部分のみを手でちぎって残し、標本とともに木箱に詰めて輸送した。総合研究博物館に残された標本は、関東大震災、戦時中の疎開の困難な状況を乗り越えて現在に伝えられたものである。


謝辞:矢島道子博士からは2002年に出版された標本目録の電子データを提供していただいた。そのデータが新しいカタログ化の出発点になっている。初期のデータ化の作業は伊藤泰弘博士のご尽力によるものである。ドイツ・ボンのクランツ商会に関する情報は、現地を訪問した経験をお持ちの田賀井篤平名誉教授からご教示いただいた。コレクションの整理作業には総合研究博物館のボランティアの会のメンバーによる長期のご協力を得た。標本データの入力、画像の作成には多数の東京大学の学生の協力を得て行っている。電子化の推進には東京大学デジタルアーカイブズ構築事業のご支援を受けた。ご協力いただいた全ての方々に厚く御礼申し上げる。



クランツ標本に関して過去に公表された情報

"矢島 道子, 市川 健雄, 田賀井 篤平. 2002. 東京大学総合研究博物館所蔵クランツ化石標本目録. 東京大学総合研究博物館標本資料報告 (50): 1-129.

YAJIMA Michiko, ICHIKAWA Takeo, TAGAI Tokuhei. 2002. Catalogue of Fossil Specimens of the Krantz's Collections in the University Museum, the University of Tokyo. University Museum, the University of Tokyo, Material Reports (50): 1-129."

https://umdb.um.u-tokyo.ac.jp/dkoseibu/pdf_mr/mr_050_.pdf

https://www.um.u-tokyo.ac.jp/academics/material_report_050.html


クランツコレクションに関する展示解説

https://www.um.u-tokyo.ac.jp/UMUTopenlab/library/d_1.html


クランツコレクションに関する記事 Ouroboros

https://www.um.u-tokyo.ac.jp/web_museum/ouroboros/v13n1/v13n1_sasaki.html

https://umdb.um.u-tokyo.ac.jp/DKankoub/ouroboros/07_02/kenkyu.html





このページの先頭へ