第2部 展示解説 動物界

軟体動物の分類と系統関係

腹足綱 (Class Gastropoda)

 

直腹足亜網 (Subclass orthogastropoda):

Apogastropoda:

異鰓上目 (Superorder Heterobranchia):

 異鰓類は 異旋類、後鰓類、有肺類を含む大きなグループであり、 現在では使われなくなった「前鰓類 (Prosobranchia) 」 と対をなす名称である。 生息環境は軟体動物の中で最も幅広い環境に適応しており、陸、淡水、深海、浮遊性の種を含む。 後鰓類と有肺類には直神経類 (Euthyneura) という名称も用いられる。

 異鰓類はおそらく単系統である。異鰓類を特徴づける派生形質は (1) 幼生の時に形成される殻 ( 原殻 protoconch) がみかけ上左巻であり、多旋型の種では しばしば左右の巻きの方向が逆転する ( 異旋 het- erostrophy) 。 (2) 軟体動物の本来の呼吸器官である櫛鰓 (ctenidium) を欠く。その代わりに二次的な鰓をも つか、あるいは呼吸器官を全くもたない。 (3) 食道は単純な管状で、内部には付属腺や溝状の構造を欠いている。 (4) 腎臓が内臓塊の中ではなく、外套腔の中に分離して存在する。 (5) 雌雄同体である。 (6) 内臓神経はねじ れないものが多い、などがあげられる。さらに、 (7) 原始的なグループでは、外套腔の背側と腹側に 1対の繊毛隆起をもっている。 (8) 歯舌突起中には軟骨を欠くものが多い。 (9) 異型精子をもたない。 (10) 卵塊中で卵がカラザにより連結されている。 (11) 眼が頭部触覚の内側にある、などの特徴が見られる。 Dayrat and Tillier(2002) によれば、腎臓内部に nephridial gland と呼ばれる腺組織をもっていないことも異鰓類の共有派生形質である。

 形態に基づく系統解析では、下記のような結果が得られている (Dayrat and Timer,2002) 。 (1) 異旋類 (= Allogastropoda) は側系統である。異鰓類の中では最初に分岐する。 (2) 「後鰓類 + 有肺類」 は単系統である。 蓋を失っていることがこのグループを特徴づける形質である。 (3) 有肺類は単系統である。呼吸孔 (pneu- mostome) 、肺血管 (pulmonary vessel) 、 前脳 (pro- cerebrum) 、背脳体 (dorsal bodies) の存在が共有派生形質である。 (4) 後鰓類の系統関係は十分に解決さ れていない。 (5) 有肺類の中の関係は基眼類は側系統である。 (6)Geophila(= イソアワモチ科、足襲類 Soleolifera 、柄眼類からなる ) は単系統である。この関係は、目が後触角の先端にあること、長い足腺 (pedal gland) が内臓腔の床側にあり膜で隔てられていないこと、顎板 (jaw) が対になっていないこと、によって支持される。 (7) 収眼類 ( イソアワモチ科と足襲類からなる ) の単系統性は支持されない。 (8) 柄眼類 、長い足腺が内臓腔の床側にあり膜で隔てられているこ と、退縮可能な触角をもつこと、 2次的 な輸尿管 (ureter) をもつことが共有派生形質である。

 分子系統解析の例では、様々な異なる結果が発表されており、現在ではまだ異鰓類の系統関係は解決さ れていない。

 

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