第2部 展示解説 動物界

軟体動物の分類と系統関係

腹足綱 (Class Gastropoda)

 

 腹足綱はいわゆる巻貝類の全てを含む。多くは海中で生活し、底生のものだけでなく、浮遊性の種もみられる。一方、汽水や淡水に生息するグループ、さらには陸上に進出したグループが複数 あり、陸上生活への適応に成功した唯一の軟体動物の綱である。解剖学的に腹足類を特徴づける重要な形質には下記のようなものがある。 (1) 幼生の段階でねじれ (torsion) が起こる ( ねじれ戻り (detorsion) をするグループもある) 。 2) 外套腔が前または右側に位置する。 (3) 体と貝殻をつなぐ筋肉は 1対または片側のみである。 (4) 幼生が蓋をもつ。 (5) 生殖器官が片側にしかない。 (6) 頭部に頭部触角がある。

 形態に基づく腹足類全体の系統解析は Ponder and :Linberg (1997) によってはじめて行われた。しかし、腹足類全体の分子系統解析はまだ十分に行われていない。

始祖腹足亜網 (Subclass Eogastropoda):

 Ponder and Lindberg (1997) によって提唱された新しい分類群である。左巻きの祖先から進化したと考えられ、その祖先と現生のカサガイ上目を含む。左巻きの祖先の候補は Paragastropoda と呼ばれる古生代の腹足類である。一方、最初のカサガイ類はオルド ピス紀中以前には知れられていない。餌をかきとるための歯舌が口の中で左右に広がらず、単純 に前後移動を繰り返すタイプ (硬舌型 stereoglossate) であることが特徴である。

 カサガイ上目 (Superorder Patellogastropoda):

 左右相称の笠型の殻をもち、幼生の貝殻も螺旋状には巻 いていない。食性は藻食で、体外受精を行う。カサガイ類は、歯舌の歯の数、鰓の形態、 殻の微細構造などにもとづいて分類されている。ツタノハガイ科 Patellidae 、ヨメガカサガイ科 Nacellidae 、ユキノカサガイ科 Lottiidae の 3科が種類が多く、潮間帯に多産する。 シロガサガイ科 Lepetidae とエンスイカサガイ科 Acmaeidae は潮下帯〜深海にかけて生息し、暖海の浅海域には見られない。

 

前頁へ表紙に戻る次頁へ


Copyright 2004 The University Museum, The University of Tokyo