第2部 展示解説 動物界

軟体動物の分類と系統関係

二枚貝綱(Class Bivalvia)

 

異靭帯亜綱 (Subclass Anomalodesmata):

 交歯は退化的で、欠く種が多い。鰓は弁鰓型で、一部は隔鰓型に変化している。殻の微細構造は稜柱構造 + 真珠構造 (原鰓類似 ) 、靭帯は外靭帯で筒状靭帯のものと、 弾帯(内靭帯) をもつものがある。靭帯の内側に石灰化 した支持構造(殻帯 lithodesma) をもつものがある。左右の外套膜が癒合するものが多い。閉殻筋肉は前後に 2つある(双筋型 )。海産種のみで、海底中に潜入して生活する。スナメガイ科とシャクシガイ科は隔鯨型の鰓をもち、肉食性である。雌雄肉体の種が多い。

 最近の系統解析では、異靭帯類はオオノガイ目の姉妹群 (Morton,1996;Salvini-Plawen and Steiner, 1996) 、古異歯類の姉妹群 (Cope,1997) 、あるいは Heteroconchia の姉妹群 (Cope,2000) 、など様々な可能性が示されている。 Giribebet and Wheeler (2002) の系統解析では異靭帯類は、マルスダレガイ目、オオノガイ目とともに 1つの単系統群を形成する。そのため、異鰓類は独立の亜網ではなく、広義の異歯類 (Heterodonta s.l.) の一部として分類する案が提唱されている。

 異靭帯亜綱は単一の目ウミタケガイモドキ目 Filoladornyoida からなり、 7上科 13科に分類されている。ウミタケモドキ上科 Phdadomyoidea のウミタケモドキ科 Pholadornyidae は殻は左右等殻で殻の後側が開いている。スエモノガイ上科 Thracioidea のスエモノガイ科 Thraciidae(図 9B) とリ ュウグウハゴモロガイ科 Peripromatidae(図 9C) では左殻の方が扇平であり、左右の殻は完全に閉じている。ソトオリガイ科 Laternulidae では、殻が薄く割れやすく、常に殻頂部に割れ目がある。ハマユウガイ上科 Clavagelloidea のハマユウガイ科 Clavagellidae の殻は筒状で、二枚貝には見えない。しかし、幼時は通常の二枚貝と同様の 形態をもっており、筒状部の表面に幼時の殻が残されている ( 図 9A) 。生時は筒状の殻をまっすぐに立てて海底につきささるようにして生息している。二枚貝網の中では最も特殊な形態をもつ科である。学名の Clavagella は「棒」を意味するラテン語の clava に由来する。ネリガイ上科 Pandoroidea のネリガイ科 Farldoridae では右殻が左殻よりも極端に扇平で、小さい。ミツカドカタピラガイ科 Myochamidae では逆に左殻の方が扇 平である。模式属のMyochama は固着性で、あるが、他の属は自由生活を送る。サザナミガイ科 Lyonisiidae 殻表に砂粒をつける習性がある。キクザルダマシ科 Cleidothaeridae はオーストラリア周辺のみに生息する。 固着性で、外見はキクザルガイ科に似ているが、内面に真珠構造をもっており、交歯の形態が異なる。オトヒメゴコロガイ上科 Verdioidea のオトヒメゴコロガイ科 Verticordiidae( 図 9D,10A-B) はハート型の殻をもつ種が多い。スナメガイ上科 Pormaryoidea のスナメガイ科 Poromyidae(図 10C) の殻の表面は微小な腕状の彫刻 に覆われている。シャクシガイ上科 Cuspidariddea のシャ クシガイ科 Cuspidariidae は後端が長く伸び、この部分を通じて水を出し入れする (図 10D) 。学名のCuspidaria はラテン語の “cuspidatus" に由来し、「尖った」という意味である。

 

 

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