ごあいさつ

東京大学総合研究博物館は,1996年に発足して以来,東京大学が収蔵する学術標本の総合的な調査・研究,データベース化を進めてきました.同時に,展示を通して,収蔵する学術標本の公開につとめてきました.

今回企画した「シーボルトの21世紀」展は,東京大学コレクション展と名付けて継続してきた特別展シリーズの16回目にあたります.日本とオランダの修好400年に当たる2000年に,総合研究博物館はライデン大学からシーボルトと彼の後継者が日本で収集した植物標本の一部,およそ400点の寄贈を受けました.この企画展ではこれらの標本を初めて公開します.

19世紀前半に来日したシーボルトは,日本に西洋医学を伝えるなど大きな足跡を残しました.また,ヨーロッパに日本の自然と文化の研究の礎となる膨大な標本をオランダに持ち帰り,日本の紹介に努め,日本理解へのかけ橋を築きました.展示では,文化の東西交流の先覚者でもあるシーボルトの貢献を21世紀を迎えた現時点で改めて紹介しようと試みました.

総合研究博物館は大学付置の博物館として,これまで展示の面でも新しい試みを行ってきました.今回は初めての試みとして,「シーボルトの21世紀」展を国際共同展示とし,オランダのライデン大学と共同で開催することになりました.シーボルトが日本で収集し,ライデン大学国立植物学博物館及び国立自然史博物館(ナチュラリス)に保管されてきた膨大なシーボルト・コレクションの一部が今回展示されますが,そのほとんどは今回初めて日本に紹介されるものです.

総合研究博物館は2002年にミュージアム・テクノロジー部門という寄付研究部門を新たに発足させました.今回の展示ではこの部門の研究成果の一部が披露されると聞き及んでいます.

今回の展示が,シーボルトがみた19世紀の日本の自然・文化の多様さとシーボルトが文化の東西交流に果たした貢献を再確認する契機になることを望んでおります.

最後になりましたが,共催をこころよくお引き受けいただき,展示事業に全面的に協力いただきました,ライデン大学ならびに同国立植物学博物館,収蔵標本・資料の借用を許可いただいたオランダ国立自然史博物館,早稲田大学図書館,国立歴史民俗博物館,本学史料編纂所,本学附属図書館をはじめとする多くの関係各位,機関に厚くお礼申しあげます.

東京大学総合研究博物館館長

高橋 進

Susumu Takahashi

Director of the University Museum, the University of Tokyo


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