デジタルミュージアムを支える技術
仮想現実技術

ビデオストリーミング

− 端山 聡 −


ビデオストリーミングは、ネットワーク経由でディジタル映像を視聴する技術である。インターネットの急速な普及により、WWWブラウザを利用して、会社や家庭から世界中のさまざまな情報を容易に入手できるようになった。文字や写真だけでなく映像の利用も活発になり、インターネット経由で世界各地からのニュース映像や、コンサート中継を視聴できるようになった。

以前は、ディジタル映像ファイルを自分のPCにダウンロードした後、再生する必要があった。ディジタル映像のデータ量は、文字や静止画に比べて桁違いに大きいので、ダウンロードに膨大な時間がかかり、とても使いにくかった。そこで、サーバからデータを受信しながら映像を再生する技術(ストリーミング技術)が開発され、待ち時間なしに映像の視聴ができるようになった。

ビデオストリーミングは、映像符号化技術とスケーラブル配信技術の2つの鍵となる技術により実現されている。テレビ映像を単純にディジタル化すると数100Mbit/sもの帯域が必要となるが、インターネットで利用できる帯域は数十kbit/s〜数百kbit/sである。そこで、映像符号化技術により1000分の1〜1万分の1に圧縮する。狭い帯域でも滑らかな動きやノイズの少ない映像符号化技術の開発が行われている。

インターネットは非保証型のネットワークであるため、映像を送信するサーバと映像を視聴する端末との間の帯域は、時々刻々と変動する。この帯域の変動に柔軟に対応し、映像の乱れなどを生ぜずに映像データを配信する技術がスケーラブル配信技術である。サーバと端末との間のネットワークの帯域を監視して、サーバから端末に送信するデータ量を自動的に調整する技術などが開発されている。

ストリーミングシステムは、映像符号化を行うエンコーダ、符号化された映像データを配信する配信サーバ、映像データを受信し再生するクライアントから構成される。配信サーバは、エンコーダで符号化された映像データを蓄積しておき、クライアントから要求があると映像データの配信を開始する。インターネット上に公開された配信サーバから、好きな時にどこからでも映像を視聴することができる。ライブ中継の場合には、エンコーダでのカメラ映像の符号化、配信サーバからの配信がリアルタイムに行われる。また、ネットワークの適切な場所に中継サーバを設置し、クライアントからのアクセスを分散させる。

現在、家庭でインターネットを利用する場合の帯域は数十kbit/s程度であり、 テレビの映像と比べるとその品質は劣る。しかし、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)などのxDSL技術、CATVや衛星を利用したインターネット環境の普及が始まっており、近い将来は数百kbit/s〜数Mbit/sの 美しい映像がネットワーク経由で家庭にも配信されるようになる。


ビデオストリーミングシステムの構成例