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[新聞錦絵の情報社会]


郵便報知新聞錦画 第九号

(妻の姦通を疑い夫が無理心中)
全体を囲む赤い枠と右上の黒字に白く抜いた題号というデザインが特徴。引用紙の号数は記されていないが、『郵便報知新聞』の記事に基づくシリーズ。本安と新志座の共同出版で、絵師は二代目長谷川貞信。

郵便報知新聞錦画 第九号

東京麻布箪笥町野田吉五郎/が妻かねなる者ハ過日より新ばし/鉄道寮に住める「クリステ」方に/傭はれたるが同し雇男寅次良と/姦通に及びたると云うわさを聞/と果して吉五郎ハ取のぼせ一刀を/手狹ミ明治八年六月二十日朝まだ/きにクリステ方に駈こミかねが庭/前に洗濯を仕居たるを見かけ直/に物も言ハせず切り伏せかへす刀に/己も割腹せしといふ夫ほど大事/な嚊ならば外へ雇などに出さぬ/か能いに

穂千堂記

郵便報知新聞錦画 第九号
図122

勧善懲悪錦画新聞 第七号
図123

勧善懲悪錦画新聞 第七号

(水ごりして鎮火を祈る婦人)
横長の画面を囲む赤い枠と上辺に記された「官許」の文字が目印のシリーズ。版元は藤井時習舎で、絵師は笹木芳瀧。自家からの出火に物を持ち出すのではなく、隣家への類焼のないよう、井戸水を浴びて神仏に祈る女性が讃えられている。

勧善懲悪錦画新聞 第七号

大坂第一大区拾九小区十二番地麩屋渡世藤井庄兵衛が/妻つねハ行年三十歳貞実にして憐れミ深く常に神佛を信仰せりこ/とし二月三日の夜二時ころ我が住居の納屋より出火して近近の人駈つけ消防か力/をつくしおつねハかくと見るより井のはたに至りまだ厳寒の比なるに繻伴ひとつと成て頻に井の水をあ/ミ神佛いのりて我家より出火したる事なれは我家の焼失するは是非もなし只我火を他に/移し多くの人の難渋せざるやふにと一心不乱に祈誓したり其真心を神もあわれミたまひてや/消防多人きたらぬ程に鎮火したり婦人の情にては一品も多く持退んとありふへきを此/る際にも我を捨て他を思ひて祈念するぞ女のこころには稀なりといふべし

藤井時習舎しるす

錦画百事新聞 第八十四号

(巡査による売春摘発)
横長の画面を囲む青紫の枠と天使が掲げる赤い帯の上に書かれた題号が特徴。版元は綿喜の別会社である百事新聞局で、絵師は二代目長谷川貞信。大阪でもっとも多く号を重ねた新聞錦絵のシリーズで、百九十号まで確認されている。

錦画百事新聞 第八十四号

女房盛りを白歯の嶋田僅かの代賃を/あてにして賎しき情の隠し売ハマアどふした心で/ござりませう親も夫も泥水へ引出む悪魔のわざか晴れて廓/の全盛でさへ苦界といふでハござりませんか大坂府下北平野/町壱丁目宿屋阪津はる御千/御年方にて見つけられました/淫売ハ/「天王寺村山本善之助娘ゑい十九年「富津丁二番町山下捨松/娘たね二十一年「空堀町宮内勇造娘こま十五年「日本橋筋/五丁目松田茂吉妻こよ二十年「南本町四丁目山田文吉妻なを/「日本橋五丁目平井国松妹千代十六年/「日本橋五丁目小川巳之助妻やす三十五年/「内本町三丁目浦谷百造娘ふね十九年/和歌山県紀伊国浅本町七辰右衛門/娘巽とみ二十五年/このおのおのハ穢を世間へふるう/御連中なるをお巡り梅木/さんが勉強て捕へられ/恥かしい事で罰を請うよりもちつと/外の稼もありそふな物でごさります縫ばりの/手一ひとつにて親夫への孝心貞操は是まで新/聞に手本もござります学校の/子供衆がたに読んで/おもらいなされ/ませ

錦画百事新聞 第八十四号
図124

錦画百事新聞 第百八十六号(女首に驚く話)

国立国会図書館蔵
『錦画百事新聞』のシリーズは、途中百十四号から右半分が錦絵、左半分が活字印刷された記事という体裁になり、日刊化された。広告によれば、一枚八厘、一ヶ月十八銭で、希望者には個別配達も行われたという。

錦画百事新聞 第百八十六
図125


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