新聞図会 第二十四号
(元魚問屋が茶道具買いで大損)
赤い枠と天使が支える縦長の題号のデザインで、八尾善から発行されたシリーズ。絵師は笹木芳瀧の実弟・笹木芳光。画面は、歌舞伎役者が勧められた手づくねの茶碗を吟味している場面である。
新聞図会 第二十四号
大阪雑喉元魚問屋/松川八十兵衛と云者茶道ニ/長じ古器目利も功者故/明治の始百六十両ニて手づくね/の茶碗を求秘蔵せしニ此頃/手元がヘチヤに成り宝ハ身の/指替売んと思ふにとても平人/ニてハ得買まじと狂言方なる/徳叟を頼ミ名も高島屋の右團治と/松鶴屋とに見せたる処百六十金もかかりし/品をいかに時世が違へバとてマサカ拾円とも/云われまじと名を惜むの俳優たち奇雅/に断云ひけれバせん方無くて外へ拂ふに漸二円と聞なり八十兵衛月夜ニ釜を/抜れし如く俄ニ杓がとつ詰て古茶のやう/に気抜がしチヤツチヤむちやむちやを云出し/濃茶薄茶の分ち無くにじり上りも出来かねて茶せん/全快覚束無しと是元来茶道の本意を失なひて/驕を事とし人を茶にせしチヤクラクを天の戒しめ/給ならん恐るべし恐るべし |