明治八年 大阪錦画新聞 第十二号
(婚礼に異議を唱える男が乱入)
右上の紅白を基本としたデザインの四角い旗がこのシリーズの目印。明治八年前半に発行されたらしい。この号は版元が阿波文、絵師は笹木芳瀧である。右手前で腕をまくり上げている男、左手に白無垢で突っ伏している花嫁、ふすまの向こうで悄然としている花婿、人間模様の縮図である。文を書いた正情堂九化は、大阪四つ橋付近の扇屋の主人・安田吉右衛門であった。
明治八年 大阪錦画新聞 第十二号
教ゆべし婦女子の親。慎べし情欲の道/東京深川御船町のことにやありけん/十五の年をむかへたる。娘に婿と/定めたるハ。勝田作治郎とて。けふ吉日の婚礼に。表ぐハらりと/一人リの男。誰に遠慮も媒酌迄。けちらすばかりニ上座へなをり/皆さん聞れよ当家の娘。おとくと夫婦の約束を。したのハ/おれが一番地。清水といへる苗字なら。泥をぬられた此つらを/洗ッてくれろと威張けれバ。四海浪さへ津波のごとく/大わくらんに盃の。九度にハあらて三々こツぱい。罵る者ハ/誰ならんと。つくづく顔を宮本と。いへる男に覚えある/娘も今ハ面目も。なくにもなけぬしたらなりけり
綿帽子き娘ならで媒約や
親の天狗の曲るはな嫁 芳瀧 |