[かわら版の情報社会]


図1 かわら版売り(仮)

かわら版売り(仮)

かわら版売りの様子を伝える図。かわら版という語は、江戸時代には使われず、読売と呼ばれ、それを街角で読み売る人も読売と呼ばれていた。一七世紀の終わりには、すでに事件を唄に作り、読売する二人連れの絵草子売りの姿が描かれている。一人がかわら版を読み謡い、他の一人が扇子などで節に拍子を付け、呼び売りしたという。

図1

図2 大坂安部之合戦之図

大坂安部之合戦之図

元和元年(一六一五)
江戸時代かわら版の嚆矢(こうし)と位置付けられてきた大坂夏の陣に関するかわら版の後摺り。従来二つの系統が確認されている。この「大坂安部之合戦之図」は、上段に大坂城内、中断に東西両軍の合戦、下段に将軍(秀忠)、宰相(徳川義直)、御所(家康)、常陸(徳川頼宣)らの東軍の陣容を刻す。

図2

大坂安部之合戦之図

{上段 大坂城内}
秀頼様
御袋様
大蔵卿
同召使六人
右京大夫
三位
大野修理
同 信濃
はやと いつみ
津川左近
いとうむさし
もりながと
竹部子
大い原八蔵
同 三十郎
藤四郎
かん長老
■い■う
かみ

にしおもん
大野たうけん

{中段}
まきの島けんない
千石ふせん
大野しゅり
大野しゅめ
おかやま
長そかめ
もりふせん
七くみ衆
さなた
天王寺
勝山

{下段}
かたきりいちのかミ
かたきりしゅぜん
かなもりいつも
くわ山いか
京こくわかさ
京こくしゅり
石川とのもにしおの

ふんこ
原田たんこ
高木もんと
といのおおい
将軍様
本多さと
安藤つしま
わけへ左京
とくなかさま
ほんたぬい
松平ちくせん
ほりのたんこ
石川なかと
ふるた大せん
一柳けん物
東たういつみ
宰相様
ほんた大すミ
いゝのかもん
ほんたふんこ
本たみのゝかミ
松平下おさ
さかき原遠江
みつのひうか
おかさわら兵うふ
さかいうた
本多上助
まきのするか
御所様
千こくひようふ
さかいさえんもんのせう
ミのやいせのかミ
さなたかわち
本多いつも
あさのうねめ
あさたしゅめ
常陸様
松下いわミ
えちせんのせうしやう
{奥}
まさむね
えちごのせうしやう

図3 大坂卯年図
図3

大坂卯年図

元和元年(一六一五)
江戸時代かわら版の嚆矢(こうし)と位置付けられてきた大坂夏の陣に関するかわら版の後摺り。二系統のうちのひとつ、「大坂卯年図」。奥書によって、「元和古写本の表紙の裡」から見出したものを文化十一年に後摺りしたとしていることが注目される。「元和古写本」とは、「大坂物語」のことである。

大坂卯年図

{上段}
わかさのかミ
もり
たん

ふくしまひんこ
{中段}
なかつ
てんま
むさししゅう
松平しもおさ
井いかもん
はしハちくせん
ゑちぜん少将
御はたもと
宰相様
ほん田いつも
ほんたみのゝかミ
とうたういつミ
ちやうす山
天王寺
松平かつさの■
まさむね
すみよし
見かわしゅう
いけたむさし
もりうこん
かとうきよ■
ほり■
せきなかと
いけ田備中
なか川ないせん
{下段}
御はたもと
中将様
きのくにしゅう

{奥}
是は慶長二十年乙卯五月大坂の落いれるかたちを絵ニかきて其頃売あるきし物なるべし
元和古写本の表紙の裡より見出しひめおけるを広く好古の人々に見せんとして
桜木にちりばめはべりぬ  于時文化十一甲戍のとし  田口 蔵

図4 大坂物かたり
図4

大坂物かたり

上巻 表紙と巻首
慶長一九年(一六一四)成簣堂文庫蔵
元和古活字本「大坂物かたり」上巻(慶長一九年)は、大坂冬の陣直後に作られた戦争ルポルタージュ風の物語。この巻末に冬の陣の陣立図が綴じられている。現在、古活字の種類、物語の内容などから、六種の版本があるとされている。このうち、写真のものは、栗皮色捺し文様の原表紙のうらに、慶長古活字本太平記の摺り遣りが使われ、題箋も原印刷のものとされる(川瀬一馬編『新修成簣堂文庫善本書目』一九九二)。付図のみ解読した。

大坂物かたり上巻付図
図5

大坂物かたり上巻付図

大阪城之画図
{左段}
エタサキ
カンサキ
スイタ
江口
森口
チト
加藤式部
中しま
ふくしま太夫
さわし
チンホウ
岡越前
はなふさ五郎左衛門
羽柴右近
山さき少々
松平ムサシ
加藤左近
せき長門/天満
ありまけんし
たんはしめ
ナカツ
ビゼンシマ
片桐市正
同 しゅせん
石川伊豆
高木丹波
中段 大坂城内
ウラク 一万二千
あさお すいふ 二千人
ミこくひた 七百人
いなきミけん 二千
たゝの道やなん山久右衛門 千人
大ノシュリ
伊藤丹波 七千人
ホリタツ 三百
テウリカノ 五千
ねごろしゆ 五百
大野主馬 千五百
はやみかいのかミ 四千
なかしま式部 二千人
上野なはしま■■
あを木ミんふ
とさみんふ 千人
ツノクニにて 五百人
明石かもん 二千人
五島又兵ウキムシャ
仙石宗ヤ
内藤クナイ二千
中段 東軍
さたけ
かけかつ(大クホ)
ほりお山城
はしはたんこ
にしおふんこ

遠藤但馬
とく長さま
(てツハラ)
京極若狭
同 しゆり
(さなた出城)伊井かもん
越前少将
桑山伊賀
わき坂あハち
やまとしゅ
とうたういつミ
(イクタマ)いこまさぬき
正宗
浅野但馬
なへしま
松平とさ(西)
すはうしゆ
長門衆
戸川ひこ
同 さへもん
右段
(久法寺)将軍様
松平いはミ(ひらの)
といのおゝい
御はたもと
兵衛様(天王寺)
本多上野
御所様
常陸様
安藤つしま
(すみよし)
(いまみや)
(さかひ)


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