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[第二部 コンテンツ]

地理


地図
地図
空中写真

地理学は、地球表面の環境と人間との関わりおよびその変化の過程を明らかにすることを目的としている。こうした視点から、地理部門が総合研究博物館において所蔵し研究解析を行っている資料は、地球の表面状態の空間情報である地図、空中写真と過去の環境変動を記録したサンゴ礁コアなどの試料である。

地図

日本国内については、江戸、明治、大正、昭和という日本の近代化の過程で作成された約3万図幅の地図を所蔵し、整理している。特に、19世紀初頭に伊能忠敬が、コンパスと天体観測を用いて作成した「伊能図」のうち、原図を忠実に模写した「伊能中図」(縮尺216000分の1。8図幅で日本全国をおおうもののうち関東を除く7図幅)を所蔵しており、その史料的価値は極めて高い。伊能図に関連して、彼が測量の際に用いたコンパスや書簡類も保存している。また、明治になってから陸地測量部が近代的測量技術を用いて作成した2万分の1迅速図、その後、戦前は陸地測量部、戦後は国土地理院が作成した5万分の1および2万5千分の1地形図は、各時代のものが収集整理されている。この他、海図、地質図、土地利用図、土地条件図など様々な主題図を所蔵している。こうした様々な時代の地形図や主題図は、近代化に伴う土地利用の変遷過程や都市化が進む前の日本の原風景について豊富な情報を提供してくれる。

国外については、地理学教室に所属する教官が海外学術調査を行った地域を中心に、アジア、ヨーロッパ、アメリカ、太平洋など世界各地の地図が約3万図幅収集されている。とくに中国や東南アジアの地図などには、戦前日本によって作成され、戦後いまだ各国で公刊されていないものもあり、貴重な資料になっている。こうした地図類の目録は、「東京大学総合研究資料館所蔵地図目録 第1部国外篇(小堀・田中編)、第2, 3部 国内篇(栗栖・米倉編)」として東京大学総合研究資料館標本資料報告 第8号(1983)、第23号(1990)、第29号(1994)としてまとめられ、出版されている。

空中写真

国土の状態を空から直接撮影した空中写真は、戦後すぐ米軍が撮影した2万分の1白黒写真が約2万枚、1960年以降国土地理院と林野庁が撮影した2万分の1白黒写真が約8万枚、1970年代に国土地理院が撮影した1万分の1カラー写真などがある。地理部門では、こうした空中写真を可能な限り収集し地域別に整理して、研究に供している。地理学の研究において調査地が決まるとまず総合研究博物館に整理されている空中写真を検索し、調査テーマに合わせて事前に判読し、フィールド調査に入る。地理学の様々な調査を進める上で、空中写真は欠かせない情報を提供してくれる。空中写真を用いて、活断層、地質構造、崩壊地など様々な地形に関する情報はもとより、土地利用、植生、浅海の地形/生物分布など、地表の多様な情報を面的に明らかにすることが出来る。また隣り合った2枚の空中写真の重なり合った部分を両眼で別々に見ることによって、地表を立体的に見ることができ、活断層や段丘崖などの微細な地形の分布を平面的に把握することが出来る。また年代の異なる空中写真を判読することによって、土地利用や植生などの変化を経時的に解析することが出来る。

サンゴ礁コア試料

熱帯・亜熱帯の海岸を縁取るサンゴ礁は、造礁サンゴなどの石灰質の骨格が長い年月をかけて積み重なって造り上げた巨大な構築物である。このサンゴ礁は、過去数千年間の海面変動、気候変動など地球規模の環境変動に伴って形成された。このため、サンゴ礁のコア試料によって、過去の地球規模変動の記録を読みとることが出来る。また造礁サンゴの骨格は木と同じ様な年輪を持っており、この年輪記録を解読することによって、過去の数100年間の水温、日射量、人為影響などの記録を1ヶ月という時間分解能で解明することが出来る。地理部門では、これまでの海外学術調査によって、琉球、マリアナ、パラオ、マーシャル、クックなど太平洋の広域からサンゴ礁とサンゴ骨格のコアを採取している。こうしたコアの解析とともに、総合研究博物館の放射性炭素年代測定装置なども利用して、太平洋という広大な空間スケールでの過去の環境変動の研究を進めている。

(茅根 創)

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