[The University Museum]


ヒトの脳

二十一世紀は「脳科学の時代」であるとも言われ、 いろいろな研究分野で神経科学の研究が精力的に進められている。 脳の機能はよくコンピュータに例えられる。 目や耳によってキャッチされた外部からの刺激が脳に伝達され、 脳で情報分析と反応機能が組み立てられる。 ヒトの脳重はおよそ1400グラムである。 体重70キロの人では、体重の2%を脳が占めている。 脳はおよそ数億個もの神経細胞から構成されていると推定されている。 今回の特別展示「デジタルミュージアム」の見学から何が得られるのかは、 この神経細胞の働きによる訳である。 ここでは、まず脳の外部構造を理解していただきたい。

[脳の標本群の画像]
脳の標本群 (所蔵:東京大学医学標本室)

下の画像は「脳の左外側面」を示している。 人類の特徴の一つである大きな大脳半球と、右下方に小脳と延髄、 脊髄上端が観察できる。大脳表面には多数の深い溝があって、 いわゆる「脳のしわ」が形成されている。

[脳の左外側面の画像]
脳の左外側面

標本ケース 横幅27cm, 奥行21cm, 高さ22cm
1930年作成

下の画像は「脳の正中断面」である。 左の部分がおでこで、大脳の前頭葉の内面である。 外側面と比較しながら見ていくと理解しやすい。 よく、右脳と左脳の独立した機能の存在が論じられるが、 左右の大脳半球の橋渡しをしている部分は、つの字をした「脳梁」 (赤の矢印) のみである。 左右の大脳で独自に分析された情報は、脳梁を通って交換され、 さらに高次の総合判断が組み立てられる。

[脳の正中断面の画像]
脳の正中断面

標本ケース 横幅27cm, 奥行21cm, 高さ22cm
1930年作成

下の画像は「脳の下面=脳底」で、上方が前頭葉、下方が後頭葉である。 中央部を占めている縦長の高まりが「脳幹」で、 その下方左右を三角形をした小脳が占めている。 脳幹は前方より間脳・中脳・橋・延髄から構成され、 その下端は脊髄に移行している。 脳底からは12対の脳神経がでている。 主として頭部の外部からの情報を脳に伝え、脳からの指令を末梢に送る、 入力・出力の配線にあたる。 ここでは5ミリほどの太さの左右の視神経と、 その交叉 (視交叉=青の矢印) に注目していただきたい。 今、あなたが見ているかずかずの情報は、 眼球の網膜から、この視神経を通過して左右の大脳半球後頭葉にある 「視覚中枢」 (赤の矢印) に伝えられ、情報分析がおこなわれている。

[脳の下面 (脳底) の画像]
脳の下面 (脳底)

標本ケース 横幅27cm, 奥行21cm, 高さ22cm
1930年作成

(神谷 敏郎)


[編者注] この展示内容に関する最新情報や関連資料等は、随時、 東京大学総合研究博物館のインターネットサーバ上の 以下のアドレスで公開、提供していきます。

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