はじめに

本書は、本館の前身、総合研究資料館の地理部門主任を長くつとめられた小堀巌教授(1924–2010)旧蔵コレクションの目録、第2部である。小堀教授は乾燥地の自然やヒトの生態を扱う地理学者として、専門研究はもとより、国内外の関連機関、学会において幅広く活躍されたことで知られている。そのご経歴は第1部に記したので繰り返さないが、1956年のイラク・イラン調査以来、半世紀以上もの間、新旧両大陸の乾燥地帯でフィールドワークを続けられた点は特筆に値する。調査時には大量の標本を収集なさった。

コレクションはご専門の岩石、鉱物などの地理学関連標本にとどまるものではなく、動植物、歴史民族、考古学、さらには政府機関ポスターや絵葉書にいたるまで、実に幅広い内容を備えている。乾燥地、すなわち沙漠地帯で収集されたことにちなみ、沙漠誌コレクションと命名させていただいたが、自然史とも文化史とも言えない資料群はまことにユニークで、我々の野外科学への好奇心をかきたてずにはおかない。目録第1部では文化史系(歴史民族)標本を収録したのに対し、第2部では自然史系(自然地理)標本を収めることとした。総計1745点を収録している。現在にわかには調査を計画しがたい各地の沙漠の時々を記録した貴重コレクションとして、今後、教育研究、展示公開等に大いに活用されるものと期待する次第である。

2012年にコレクションが本館に集結されて以来、その整理にあたっては、多くの関係者のお手をわずらわせてきた。総合研究博物館地理部門主任茅根創教授、大学院理学系研究科地球惑星科学専攻栗栖晋二技術専門員には全面的なご協力をいただいた。また、標本の写真は上野則宏(上野写真事務所)氏に撮影いただいた。データ整理においては、有吉亮(慶應義塾大学)、池山史華(早稲田大学)両君の協力を得た(所属は全て当時)。

加えて、標本の出所や名称の鑑定にあたっては、目録第1部作成時と同様、多くの識者に専門的知見を提供いただくこととなった。ご芳名を掲げ、謝辞とさせていただきたい(五十音順)。赤司千恵(総合研究博物館)、新井才二(総合研究博物館)、下釜和也(古代オリエント博物館)、鶴見英成(総合研究博物館)、馬場匡浩(早稲田大学)、米倉浩司(東北大学)。これら多くの方々のご尽力にもかかわらずなお残る不備は編者らの責任である。


 東京大学総合研究博物館
西秋良宏

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