はじめに
本データベースは1956年から1957年に実施された第1次・第2次東京大学イラク・イラン遺跡調査団(団長:江上波夫)が残した記録写真のうち、イラン国で撮影された公式写真を収録したものである。制作には令和3年度科学研究費公開促進経費(代表:西秋良宏、課題番号21HP8007)を使用した。
この調査団は日本の学術機関が第2次世界大戦後に海外に派遣した最初の大型人文学術調査であったため、その活動内容をとどめる写真群は既に歴史性をおびている。学術的成果を記録するのみならず、今日、活発におこなわれている海外学術調査がどのようにたちあがったのかを語る学史的価値をも含んでいる。事実、今回の写真群には日本人が西アジア地域で初めて実施した考古学的発掘であるイラン南部マルヴ・ダシュト遺跡群の調査記録がふくまれている。さらにいえば、当時の写真は、今や、姿を変えてしまった中東の半世紀以上も前のいっときの姿を写しとどめたものであるから、民族誌的価値をもおびているに違いない。
現在、上記のような本データベース公開の意義、イラン調査の経緯などについての説明も含む出版用データベースの作成をすすめている。それが刊行される際には、本データベースも更新する予定である。
2022年5月
東京大学総合研究博物館 西秋 良宏