標本資料報告 第37号
東京大学総合研究博物館地史古生物部門所蔵
白亜紀アンモナイト類登録標本データベース
棚部一成1、伊藤泰弘2、守屋和佳1、佐々木猛智2
1 東京大学大学院理学系研究科地質学専攻、2 東京大学総合研究博物館
はしがき
このデータベースに収録したアンモナイト類は軟体動物頭足類に属し、古生代シルル紀末期から中生代白亜紀末の海洋に繁栄を遂げた古生物である。その化石は世界各地の海成中・古生層から多産し、形態の時代的変化が著しいために、古くから地質学的・進化古生物学的研究に利用されてきた。 日本列島(とくに北海道)やロシア連邦サハリン州の海成白亜系からは、世界的にみて保存のよいアンモナイト化石が多産し、横山又次郎(1890)以来、本学の教官・学生・院生を含む内外の多くの研究者により種分類、化石層序、系統進化、古生態、タフォノミー、機能形態、理論形態、初期発生などの研究が行われてきた。これらの研究に用いられ、我が国の研究機関に登録・保管された標本類は約1万点に達するが、そのうち本学総合研究博物館地史古生物資料部門には約1500点が収蔵されている。このなかには種の基準となった模式標本類 を約200点含んでいる。
本データベースは、データベース・ソフト、File Maker Pro. Ver. 4により書かれ、1998年末までに登録された標本に関するデータが収録されている。 同じ標本が二度以上にわたり研究・記載された場合は、1個の標本でも複数枚のカードが作られている。データカードは、原記載と標本の照合に基づいて作成され、1) 当該論文記載種名, 2) 原記載種名、3)高次分類上の位置(亜目、超科、科)、4) 登録番号および収蔵機関、5) 標本の種類、6) 保存状況、7) 記載箇所(著者、年号、頁、図版など)、8) 産出層準、9) 地質時代、10) 産地、11) 引用文献、12) 産地記載論文、13) 補足、の項目が英語で入力されている。また、添付のCD−ROMには、データファイルのほかに模式標本と後模式標本のカラー画像も収録されている。 データファイルは単独または複数の入力項目から自由に検索することができ、必要なカードはプリンタに出力したり、別のファイルとして保存することもできる。本書でまとめた出力データは、当該論文記載種名のアルファベット順に並べて示している。なお、このデータベースは、近い将来本館のホームページを通じてインターネット上でも公開予定である。本書を用いることにより、データベースの利用がいっそう容易になることを期待する。
本書の編集に際しては、市川健雄(東京大学総合研究博物館)、佐藤慎一(国立科学博物館)、金沢謙一(東京大学総合研究博物館)、川辺文久(国立科学博物館)、和仁良二(早稲田大学)、重田康成(国立科学博物館)の各氏をはじめとする多くの方々のご協力を得た。この場を借りて厚くお礼申し上げる。なお、データベース作成に際しては、平成9−11年度の文部省科学研究費補助金研究成果公開促進費(データベース)(申請番号503008)および本学総合研究博物館プロジェクト研究経費を使用した。記して、関係者各位に深謝する。
平成12年
棚部 一成