ひと言で答えるのはむつかしいのですが、直立二足歩行では重心が股関節や膝関節の近くに位置し、バランスが取りやすくならなければなりません。そのために、脊柱や骨盤や下肢のあちこちに、類人猿とは違った独特な構造が見られます。バランスをとるための筋肉の配置も、骨格構造と共にセットで進化してきたと考えられます。ですので、骨の見方のポイントがわかっていれば、化石からでも直立二足歩行を行っていたかどうか、判断がつきます。
幅が広く、上下に短い骨盤が直立二足歩行のための構造改革の重要な一つです。上下に短く幅が広いと、脊柱の腰部が前方の凸湾を形成しやすくなり、重心が股関節の真上に近接して、バランスがとりやすくなります。人類に独特な、いわゆるS字状に湾曲した脊柱の出現です。
また、幅の広い骨盤は大腿部の筋と殿筋群の変革とセットで起こったに違いないので、歩行時の筋機能とも関連していたのです。さらには、上下に短くなった腹部の内容物の支えとしても機能したことでしょう。
膝が内側についているのも、バランス制御と関連する直立二足歩行の特徴です。こまかい関節構造などの特徴はさておき、大局的には、幅の広い骨盤から膝まで大腿骨が斜めに降りてくるので、大腿骨の骨幹軸が膝関節の水平軸に対し、10度ほど斜めになっています。面白いことに、この特徴は現代人でも新生児にはみられなくて、歩き始めたあとに形勢されます。すなわち、歩行時の刺激を受けて骨の発育が調節され、斜めの角度が形成されるようです。