ごあいさつ




 東京大学総合研究博物館は、国立大学初の大学博物館として1996年5月に開館し、2006年で10周年を迎えます。また当年は、当館の前身である総合研究資料館の発足から数えても40周年となる記念すべき年にもあたります。これを記念いたしまして、このたび「アフリカの骨、縄文の骨――遥かラミダスを望む」展を開催する運びとなりました。
 この10年間、東京大学コレクション展を第20回まで開催するなど、積極的に一般公開に取り組んで参りました。また、2001年に開館した小石川分館においては、「学誌財」を常設展示するほか、学術と芸術の斬新的なコラボレーション展示にも取り組んで参りました。2002年にはミュージアム・テクノロジー寄付研究部門が設立され、21世紀における博物館のかたちの創成に取り組んでおります。
 本学では、法人化後、「世界の東京大学」を名実共に実現することを全学的な目標と掲げています。そうしたなか、当館においては、世界的水準で誇れる高度なオリジナリティに富んだ博物館活動を推進する必要があると考えています。そこには博物館として「もの」=学術標本を扱う専門領域ごとにそれぞれのオリジナリティの追求があるでしょうし、博物館活動そのものの取り組みにおけるクリエイティビティが発現されて然るべきでしょう。また、より具体的な一例としては、社会貢献として、学術を「翻訳」し、公開する展示活動自体におけるオリジナリティも問われることでしょう。
 本展示では、博物館としての原点、「もの」=学術標本における専門性に立ち返りながら、同時に博物館における公開活動の可能性を追求する目的で、人類学とミュージアム・テクノロジー研究のコラボレーション展示を執り行いました。人類学における最先端の発見とそれを巡る研究現場として、人類の起源に迫るラミダスとカダバ猿人(400から600万年前)とヘルト人(16万年前の最古の「現代人」化石頭骨)に焦点をあてました。また、伝統のある本学ならではの学史的な重要発見、学術の積み重ねとして、当館収蔵の姥山貝塚出土の古人骨とその背景にある膨大なコレクション、そしてそのキュラトリアル・ワークを取り上げています。一見つながりのなさそうな「アフリカの骨」と「縄文の骨」との間の、博物館現場における有機的な関わりを、展示というメディアを用いた三次元空間でいかに効果的に表現するか。本展覧会は、その挑戦といっても良いでしょう。
 最後に、本展の開催にあたりご協力をいただきました関係各位、機関に対し、ここに改めて深く感謝の意を表します。


2005年11月
東京大学総合研究博物館館長
高橋 進