第2部 展示解説 植物界
馴染みの薄いアジサイ科 アジサイの仲間は、形態学的な特徴による従来の分類体系ではユキノシタ科 Saxifragaceae に分類されていた。そのユキノシタ科の特徴は、5数性の花としては雄ずいの数が少なく、雌しべがふつう 2つで、乾燥果になるというものである。しかし、この、広義のユキノシタ科には上記以外の形態ではまったくかけ離れた特徴をもつ雑多な植物が分類されていて、多くの学者が異質なグループが含まれることを指摘していた。アジ サイ ( 図 5-8〜11) やウメパチソウ ( 図 5・24) の仲間などがそれで、それぞれが別の科としてユキノシタ科から分離する説も唱えられていた。 分子系統学的な解析は、やはり従来の広義のユキノ シタ科 ( 図 5.1〜24) が系統的にはかけ離れた雑多な植物の集まりであったことを明らかにした。アジサイの仲間もそうで、狭義のユキノシタの仲間 ( 図 5・13〜21) との間に類縁性はなく、別の科としてユキノシタ科から分離することが妥当であることが判明したのである( 図 4) 。
分子系統樹にもとづけば、アジサイ科は、主に合弁花からなるキク類グループの基部に位置し、ミズキ科などと共にミズキ目に分類される。さらに、広義のユキノシタ科に含められることのあったスグリ( 図 532)、ズイナ ( 図 533) 、ウメパチソウ ( 図 534) などの位置づけも明らかになった。スグリとズイナの仲間は共に木本性で草本中心の狭義のユキノシタ目から分離し、スグリ科、ズイナ科として分類する説があったが、分子系統樹ではこれら 2つはユキノシタ目に内包されることを示している。ウメパチソウの仲間はニシキギ科と類縁性を示し、狭義のユキノシタ科とは系統的に離れていることが示 された( 図 3,4) 。
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