第2部 展示解説 植物界
植物分類学の歴史 リンネの時代には植物を詳細に観察し、種の特徴を明らかにし、その類似性にもとづいて分類体系を構築しようという考えもあった。とくにすぐれた動物学者ビュッフォンがいたパリの植物園で植物の分類に携わっていたジュッシュー家の学者たちはこのような立場から植物の分類を考えようとした。 1789 年にアントワ ーヌ・ロラン・ドゥ・ジュッシュー (Antoine Laurent de Jussieu) が刊行した『植物の属』(Genera plantarun) はこの立場から属の分類を行ったもので、後世の植物学に大きな影響を及ぼした。 19世紀にはパリ植物園で研究を始めたジュネーヴ のド・カンドル (A.P.de Candolle) 、弟子でイギリスのキュー王立植物園の研究部門の充実に尽くしたベンサム (G.Bentham) とフッカー (J.D.Hooker) 、ベルリンの エングラー (A.Engler) などは、個々の植物の類似性を基盤とするジュッシュー理論による分類体系 ( これを 自然分類体系という ) の構築を試みた。ベンサムとフッカーによる分類体系とエングラーの分類体系は今日でも多くの植物誌や植物園、植物標本館でのコレク ションの配列に採用されている。 20世紀には、ダーウィン(C.R.Darwin) の進化論の影響によって、「進化の道筋」、つまり系統に従った分類体系の構築が盛んに試みられた。また、種の概念も、従来の類型的概念だけでなく、生物の生殖や遺伝についての理解にもとづく生物学的な種の概念が提唱され、分類学的な分析が進んだ温帯先進国では後者の種概念が取り入れられつつある。
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