第2部 展示解説 動物界
軟体動物の分類と系統関係

 

軟体動物の特徴

 多様性という観点から、軟体動物には4つの特徴をあげることができる。第一の特徴は、種数が多いこと、 すなわち「種の多様性」である。現生の貝類は日本産の種だけで、未記載種も含めて1万種近く存在すると予想 される(表 1) 。

 肉眼で見える大きさの生物では、昆虫が圧倒的に種類が多いが、軟体動物はその次に多い。

 第二の特徴は「ボディープランの多様性」である。軟体動物は体の構造が複雑で、異なるグループごとに多 くのパターンが見られる。貝殻を持たず細長い虫のような無板類から、螺旋状にねじれた体を持つ腹足類、体の左右に殻を持つ二枚員類、殻を失って遊泳能力を持つ頭足類まで、ボディープランは様々である。

 第三の特徴は、「生息環境の多様性」である。多くの軟体動物は海に生息し、海底に接して生活している(底生) 。しかし、一部のグループは海中に漂い(浮遊性、漂泳性) 、積極的に泳ぐものもある (遊泳性) 。陸上では、空中を除く幅広い環境に適応しており、汽水、淡水にも分布している。

 第四の特徴は、「地球史を通じた多様性」である。 軟体動物は化石記録が豊富であり、カンブリア紀初期から現在にいたるまで、化石が連続的に産出している。 生物は一般には死後急速に腐敗し分解されるが、軟体動物は石灰質の殻をもつため保存されやすい。 軟体動物のように現在だけでなく過去においても繁栄していたことが明らかな生物は限られている。

 このように、種数、ボディープラン、生息環境、化石記録のすべてにおいて存在感のある生物である ことが、軟体動物の特徴である。

 

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