第1部

分類 階級

現代の生物学において、分類は単なる類似性ではなく、進化における系統関係にもとづいて行うことになり、各分類階級に含まれる種や属などの数もリンネのころとは比較にならないほど膨大なものになったが、リンネが作った命名法や体系化のルールは現在もそのまま受け継がれている。

 

リンネの3界

 自然を分解していくと、それぞれが均一の属性をもった物体から成り立っている と理解することができる。これを自然物とよぶことにする。私たちの周囲にはさ まざまな自然物がある。古くから少なくとも 19世紀の半ば頃まで自然物はすべ て神の創造によって生み出されたと考えられていた。

 18世紀の博物学者で医者でもあったりンネはあらゆる自然物を神に代わって登録しようと考えた。それには登録のための原理を確立する必要があった。

 そこでリンネはますあらゆる自然物を「種」を基準に登録しようと考えた。そのためには個々の自然物の素性、つまり特徴を明らかにする必要がある。さらに人間 社会でも、単に個人を登録するだけではなく、家族、親族、部族というように、大 きさの度合いが異なる階層に位置づけていくように、認知された種を度合いの異なる分類階級の中に位置づける、という分類原理を確立した。「種への区分」と「種の階層的な位置づけ」という2つの原理にもとづいて初めて自然の体系化に成功したのである。

 このときリンネは自然物の最上位の階層に王国を意味する regnum の語を用い、自然物を鉱物、植物、動物という3つの王国にまず大分けせしめた。 regnumの語は、後に分類学では「界」と呼ばれることとなった。リンネの3界の定義は、 「Lapides crescunt. Vegetabilia crescunt & vivunt. Animalia crescunt, vivunt & sentiunt.」( 鉱物は生長する。植物は生長しかっ生きている。動物は生長し、生きており、さらに感知する。) というものであった。ただし、自然物を鉱物、植物、動物の 3界に分けるのは、リンネの独創ではなく、ギリシアの哲学者アリストテレスに従ったものである。

 リンネが3界で用いた分類法は鉱物界、植物界、動物界でそれぞれに異なるものであった。植物界のそれは、雌雄蕊の数の遣いを標徴とし、性分類体系と呼ばれる。 動物ではグループごとに異なる複数の属性が標徴として取上げられた。鉱物では当時の慣習に従い無機的性質の実用性にもとづいて体系化を行った。

 

 

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