用語 |
訳語/用法 |
アプロプリエーション
(英: appropriation)
(仏: appropriation)
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[剽窃][盗用]
他者の作品をそのまま複製化し、自らの作品とすること。複製化された作品のコンテクストから現前するイメージを借用し、別のコンテクストの中に借用されたイメージを組み合わせることによって新しい作品を作ろうとする企てである。この現前するイメージとは、一般に流布している既製品、広告、メディア等あるいは著名な(誰でも知っているような)芸術作品に付随するイメージ(あるいはその「像」そのもの)である。これらは時にはそのイメージを忠実に再現し、借用者自身の作品として提示される場合もある。このようにその作品がオリジナルの忠実なコピーであっても、年代や制作者を偽り鑑賞者や収集家を欺くことを目的としない限り、贋作とは区別される。一見センセーショナルなこの手法であるが、こうした借用の根本的な考え方は、20世紀初頭に端を発する手法の流れを汲んでいる、二次元的な「ファウンド・オブジェ」と等価物であるとする見方もある。
この手法もオリジナル重視に対する挑発的な行為の一種であるが、アプロプリエーションという用語自体は、制作の単なる技術あるいは方法ともいえる。
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コピー
(英: copy)
(仏: copie)
(独: Kopie)
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[複製][模作][模刻]
ラテン語のcopia「豊富」(ops, opis「能力」と「結合」「同伴」を表す接頭辞cumの結合語)を語源に持つ。限られた意味においては、コピーという用語はオリジナルの芸術家あるいは彼の弟子達の直接的な介在なしに制作された芸術作品に適用された。コピーはこのようにヴァージョンやレプリカと区別されていた(→ヴァージョン、レプリカ)。また模倣された作品の特徴の一つとして、過去の作品を自分のものとして理解し直すことがあげられるため、その行為は文化的選択や歴史に対する姿勢と結び付いていた。従ってさまざまな教育の場で行われる模倣は、一定の表現力を達成し、ある造形技術を後世に伝えたり教授する目的で行われるため、手本となる作品は文化的にある時代を特徴づける作品が対象とされることが多い。こうした現象はギリシャ時代の美術品の模刻と模写(コピー)に遡る。当時の彫刻等は不動産に近い美術品であったため、これらを模することにより動産化し、蒐集することにより、ギリシャ世界の全体像の把握にも役立てられていた。この場合、オリジナルである美術品とコピーされた対象物との間の価値の差はほとんどなかった。ローマ時代にコピーによる様式および造形の認識理解が始まったが、芸術家や造形職人の仕事は模写・模刻が大きな位置を占め、仕事の中心は昔からの主題や装飾様式のモティーフあるいは決まりごとを組み合わせて応用することにあった。すなわちコピーは技術習得のための修業の一部であり、芸術家の個性の持つ価値はほとんど無視されていた。ルネサンス期に入ってもコピーは重要な技術習得のための手段であり、初期のアカデミーにおいては古典古代の作品を写生することが教授法として採り入れられていた。近世初期に至って芸術家の個性・独創性が重んじられるようになり、作品もそれ自体として評価されるようになっても、技法学習のためのコピーは盛んに行われていた。しかしこの時代になると忠実なコピーがなされている場合であっても、その芸術家の個性と時代様式とが現れていることが多い。また、芸術鑑賞・作品蒐集の要求が高まるにつれて贋作・偽作としてのコピーの問題が現れてきた。現在では科学技術の進歩によりコピーは「模倣」とは訳されていない。それは文化の継承、技術の習得というよりは物が物を写す行為に適用されることが多いためである。それはものの在り方もしくは像同士の間の関係をいう記号学的概念をさす。そのために結果における像と像との相似性が重視されており、技術習得のための模倣とは分けて考えられている。
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フェイク
(英: fake, forgery)
(仏: falsification)
(独: Fälschung)
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[贋作][偽造]
年代や制作者を偽り、鑑賞者や収集家を欺くことを目的とする制作およびその作品。芸術作品における贋作は、流通市場と蒐集趣味の発生と共に出現した。起源は古代ローマにおいて、ギリシャの作品が蒐集されるようになった時に遡る。さらにその現象に拍車がかかったのは、考古学に対する関心が急速に高まった18世紀頃であり、当時有名な贋作がいくつもの大きな美術館に入るという事件が多数発生している。
贋作には大きく分けて二種類あり、一つは原作の精巧な模造としての贋作であり、もう一つはある時代やある作家の様式や要素を借用して制作されたありうべき作品としての贋作、パスティッシュ(→パスティッシュ)である。従って技術の習得のため、または貴重な原作(オリジナル)のレプリカや模作を作るために、制作者が他の芸術家や原作に倣って作った写しである模作は、誤解もしくは故意によってそれが真作として流通しない限り、贋作と区別される。現在では贋作家の技量は、その模するべき作品の時代の流行を追った表面的に忠実な贋作を作るだけにはとどまらず、作品の素材から本来の制作工程の復元、あるいはその老朽化過程に至るまでの様々な贋作制作技術を進歩させ、それらの作品をある意味洗練させる能力を高めている。
現代芸術においては贋作の一つの手法であったパスティッシュが引用の一手法として認められ、その作品はパスティッシュの作品として成立し、もはや贋作とは区別されている。
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イミテーション
(英: imitation)
(仏: imitation)
(独: Imitation)
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[模倣][模造品][擬態]
ギリシャ期以降芸術の本質は模倣的再現におかれており、自然模倣が模倣概念の古典的理論の典型であった。古代ギリシャ期には行動の模倣や性格、心情のような内面状態の表出も模倣概念に含まれていた。近世になると自然模倣を補うものとしての古代人の模倣という考え方が現れるてきた。これは古代人の自然対象の捉え方を習得することを目的としており、一定の表現力および技術力を達成し、過去の芸術作品を自らのものとして理解しなおすことを目的とする一種の方法概念であった。近代以降芸術作品の中に芸術家の精神的個性を読みとる態度が形成され、模倣と表現が分離して考えられるようになった。そして現在では一般的な用語としてのイミテーションは、模造品、偽造品、にせもの、擬態という意味を持つようになっている。
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マルティプル
(英: multiples)
(仏: multiple)
(独: Multipel)
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リプロダクションが複製芸術一般を指すと同時に、その中でも特に平面的な芸術作品を指す場合にも用いられるのに対し、マルティプルは立体的な美術作品で量産されたものをさす。従ってオリジナルと複製という関係は存在せず、言い換えればすべてがオリジナルである。版画や鋳造彫刻は通常多数(in multiple)作られていたが、エディションなどにより数が制限されていた。こうした複製芸術に対して絵画、彫刻、素描等はそれぞれの作品の唯一性により複製芸術よりも高く評価されていた。
こうした唯一性、オリジナル作品に対抗して20世紀半ばから幾つかの芸術グループの間で次第に使われるようになった用語としてのマルティプル(multiples)は、非限定数で様々な工業的過程によって生産されることを意図して制作された芸術作品である。従って芸術家は工業的過程に対して青写真あるいは構成のみを制作するということもある。しかし実際にはマルティプル作品が大量に作られることはめったにない。このマルティプルのコンセプトは作品制作において技能は価値がないということを示すことにより芸術家の技のみへの礼讃に対する挑戦と、芸術作品はもはや収集家や鑑定家のための希少価値のある品物ではなく、工業製品のように大衆に向けた消費財とみなされるべきであるというところにある。またこれは、芸術作品の価値は目に見える形においてイメージと思考を伝えることが芸術家の能力であるという主張でもある。
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オリジナリティ
(英: originality)
(仏: originalite)
(独: Originalitat)
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[独創性]
モダニズムにおけるアヴァン・ギャルド運動の基本的な価値の一つ。近代以降の芸術家の「天賦の才」、天才としての芸術家の独創性の重視から急激に一般に浸透した。そこには芸術家が作り出す作品は、芸術家の個性から産み出されており、他人の作風や模倣や過去の様式の延長とは区別される特徴を備えているべきであるという考え方が根底にある。同時にそれは今までにはなかった、芸術作品における「新しさ」を重視する考え方であるともいえる。しかし近代以前には工房による制作や芸術家の無名性は珍しいことではなかった。そのためポスト・モダニズムの状況の中、このオリジナリティをモダニズム神話の一つであるとみなされ、それを破壊するためにオリジナリティを挑発し、あるいは攻撃する作品が制作されるようになったといえる。
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パラフレーズ
(英: paraphrase)
(仏: paraphrase)
(独: Paraphrase)
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[転用]
ある作品の全体構造を別の作者が自らの作品の全体構造に引用すること。パロディ、サイテーションが自らの文脈の中に、他から借用した一部分を持ち込み、その一部を自らの作品の一部として利用するのに対し、パラフレーズは、オリジナルとなる別の対象の全体的な構造を自らの作品に持ち込む引用方法である。全体構造を自らの作品に持ち込むために当然部分も借用した対象に近づくが、その全体を構成している各部分は、当の作者によって入れ替えられ再構成される。言い換えれば他者の作品の全体性や構造上の特徴の「引用」であるといえる。
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パロディ
(英: Parody)
(仏: parodie)
(独: Parodie)
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[風刺][諧謔]
起源は紀元前7、8世紀のギリシャに遡る。語源は真似歌を意味するギリシャ語の「paroidia」に由来する。他者の作品を引用し、別の文脈にそれを置くことにより、その文章に二重の意味と背景を持たせる効果をもつ。ある名作の詩句や文体を模倣し、内容は全く別の事柄を表現することによって、その外形と内容との不一致から滑稽な効果を与える詩・韻文が多いが必ずしもこれに限らず、しばしば諷刺の手段としても用いられた。
パロディはオリジナリティとの並行関係で発展を遂げ、20世紀に入ってからは、コラージュ、アサンブラージュという造形的表現をも開拓したともいわれている。S・ジョンソンはパロディを「他者の作品を引用し、それとは別の文脈に位置づけること」にパロディの本質を見いだし、剽窃と明確に区別している。『パロディの理論』の著者リンダ・ハッチオンによれば、パロディとは「批判的距離をもった模倣」であり、形式的に他者の模倣であるばかりではなく、明白に内容の問題と関わっており、「皮肉な『文脈横断』 (trans-contextualizing)と転倒をもった反復」と定義している。このように「引用」の中の一手法としてのパロディの特徴としては、パロディされた作品とオリジナルのテクストとの関係が変形的であり、対象とされたテクストと作品との間にはアイロニーを含んだ距離があることがあげられる。従ってパロディにおいては、その結果として生じる作品と対象としたテクストとの差異が強調される。またパロディは二つのテクストの統合という点で、単一テクストの模倣形式を持つパスティッシュと区別される(→パスティッシュ)。
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パスティッシュ
(英: pastiche)
(仏: pastiche)
(独: Pasticcio)
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イタリア語の「pasticcio」(ごったまぜ)に由来するフランス語。他者の作品の様式・部分的要素を借用しながらありうべき作品をつくること。元々は「様々な断片からなる絵画あるいはデザイン、部分的修正を加えた、オリジナルからコピーされた絵画あるいはデザイン、または別の芸術家の様式の公然の模倣(imitation)、あるいはそのような絵画様式等」と定義されており、従って「パスティッシュ」という用語は一般に様々な他の作者の様式を借用して制作された、その作者自身の統一された様式を持たない折衷主義的作品に対する軽蔑的な意味で用いられた。また「様々な断片をつなぎ合わせる事によりありうべき作品」を制作することから、ある著名な作家風の作品、ある時代風の作品を制作することが可能なために本来は贋作の一手法でもあった。
しかし現在では作品制作における、引用の一手法として確立している。同じ引用でもパロディ(→パロディ)の特徴がテクストと作品との関係が差違の強調であるのに対し、パスティッシュの特徴はテクストと作品の関係が模倣的であり、対象としたテクストとの差異よりも同一性を強調することがあげられる。またパスティッシュの場合はパロディと異なり、模倣に嘲弄的な意図は含まず、対象に対して敬意をもち、その良い部分を選択的に利用しつつ、当の対象に位置ずらしを行ってみせることもパスティッシュの特徴である。そのためプルーストは、パスティシュを「賞賛的批判」と述べている。同時にここには他者の語法の習得という側面もあることが指摘されている。
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リコンストラクション
(英: Re-construction)
(仏: reconstruction)
(独: Rekonstruktion)
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[再制作][模作][復元][再興]
複製対象の素材による分類において、平面的な複製芸術のリプロダクション、立体的な複製芸術のマルティプルという語に対して、建築の複製をさす。
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レプリカ
(英: replica)
(仏: replique)
(独: Replik)
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[写し][模型]
語源はラテン語の「replicare」、イタリア語の「replicare」(反復する)の派生語。ローマ時代には、ギリシャ彫刻の模刻を意味し、ルネサンス期には、原作者自身(replica d'autore)、あるいは同一工房(replica di scuola)によって制作された原作(オリジナル)の写しを意味しており、それらはオリジナルとほぼ等価と考えられていた。ポンペイの遺跡発見によって考古学に対する関心が急速に高まった18世紀には、発見された遺物の写しとしてのレプリカ、すなわち同一工房および同一作者によらないレプリカが制作された。この場合「レプリカ」という語は、原作の表現方法および内容の再現物に対して用いられた。その原作との類似性の高さのため、「レプリカ」という語が資料としての意味と贋作としての意味の両方の価値をもつようになった。一般的にレプリカの目的は、とくに好まれ重要であると考えられた主題を繰り返し制作探求することにあるが、そのことによってレプリカはある時代の文化的な反応の指標ともなった。
1950年代以降、マルセル・デュシャンのマルティプルの登場によって再び「レプリカ」という語が注目されるようになった。デュシャンは、自己の作品のいくつかをそれぞれ複数のオリジナル作品として制作・流通させた。その結果現代美術においては、同一作者によってあるいは同一作者の監督のもとに再制作された作品、あるいは同一作者から再制作することを奨励、許可された作品を指すようになった。こうしたレプリカ作品の制作はオリジナル信仰の破壊へと結びつき、さらに消費社会におけるポップ・アート、シミュレーショニズムへと展開していった。
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リプリント
(英: reprint)
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[復刻][覆刻]
版本を原本のまま再現すること。その際、原版を用いて再版するのではなく、新規に製版しオリジナルの印刷物を再現する。
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リプロダクション
(英: reproduction)
(仏: reproduction)
(独: Reproduktion)
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[複製物][複製]
一般に版画、鋳造彫刻などはじめから(オリジナルの)複数生産を行う芸術作品をリプロダクションと呼び、コピーとは区別されている。二次元的なリプロダクションの始まりは15世紀の版画に始まる。当初はあるデザインの模写を制作することが版画を制作するときの基本的な意図である場合、この版画に対して「複製版画」(reproductive engraving)という用語が用いられ、デザインを描いた画家と彫版した彫り師あるいは擦り師が同一である場合は「創作版画」(creative engraving)という用語が用いられ、両者は区別されていた。しかし版画技術が進むにつれて、オリジナルの作者が描いた図柄を簡単にそのまま版画にすることができるようになると、この区別はなくなり、版画のような複製芸術全般に対してリプロダクションという言葉が用いられるようになった。
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リストライク
(英: restrike)
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[後摺り]
オリジナル・エディションが完成し、限定枚数印刷された後、破棄されなかった原版から摺刷された版画。
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シミュレーション
(英: simulation)
(仏: simulacre)
(独: Simulation)
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[模像][虚像]
シミュレーション技術とは、あるデータを採取するために、現実を模倣する状態を作り出し、その推移を観測する技術である。それが芸術用語に援用されたとき、シミュレーションは模造品(replica)、虚偽あるいは偽造された何かさすようになった。それは実体を欠き、外観のみを有する「模像」でもある。シミュレーションとシミュラクル(simulacrum複数はsimulacra)は最近の芸術用語においては事実上同義語となっている。シミュレーションは正確には偽造(forgery)あるいはニュース記事になる事件の再現を述べるのに使われていたが、アート・ワールドにおいてこの用語は、ジャン・ボードリヤールや他のフランスの思想家達のポスト・モダンに対する見解に帰する。ボードリヤールによると我々はもはや我々の現実のイメージと本物の現実を区別することができず、イメージはそれらがかつて論じられたものに置き換わっているという。ボードリヤールは言う、「もはやイミテーションの問題でも、反復の問題でもない。それは現実そのものに対する現実を代用している記号の問題である」。そしてこうした流通する記号は新しい技術によって終わりなき再生産あるいは情報やイメージの増殖を促進していると論じる。こうしてボードリヤールは、オリジナルとコピーという対概念を否定し、真正性の概念は本質的に無意味であるということを提示するに至った。ボードリヤールのこの理論はモダニズムの時代、すなわちアヴァン・ギャルド運動を支えていた「新しさ」あるいは「オリジナリティ」に高い価値を与えていた時代の終わり、あるいはオリジナリティの意味を疑問視する芸術家達の関心と密接に繋がっている。シミュレーション・アートの中には、絵画作品や広告作品をそのまま援用する「アプロプリエーション・アート」(→アプロプリエーション)、既成の物語を援用しつつ、オリジナルの物語を異化させる「ナラティブ・シミュレーション」等がある。いずれにしても日常に氾濫する周知のイメージを利用することで、それらが本来もっている意味を変容させることを目的としている。
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ステート
(英: states)
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[版]
ある意図により原版に手が加えられていく段階。この場合手を加えるのは同一作者の場合もあれば、第三者の場合もある。
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ヴァージョン
(英: version)
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[版]
オリジナルをもとに変更が加えられた版。この場合ステートと違い、原本に手を加えるのではなく、まったく最初から彫りなおす(あるいは作り直す)別の段階をいう。
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