16 版木による「覆刻」がテキスト改竄の舞台となる!





 元本と覆刻本の異同を比較照合することから、出版事業を取り巻く様々な環境の変化を読みとることができる。元本は寧波の華花聖経書房が印行した活版本。これをかぶせ彫りで覆刻するにあたって、訓点をつけた箕作阮甫は、キリスト教に関係のある語を巧みに削って文章をつなげている。キリスト教禁教時代における新知識の将来のあり方を物語る興味深い例の一つである。

16-1 リチャード・クォーターマン・ウェイ著『地球説畧』
活版(一号活字・三号活字使用)、和装本袋綴じ、縦25.0、横15.0、寧波華花聖経書房刊、1856年(安政3年)、個人蔵

16-2 リチャード・クオーターマン・ウェイ著『地球説畧』(箕作阮甫訓点)
整版、和装三巻本袋綴じ、縦25.6、横17.5、老皂館覆刻、整版本、1860年(万延元年)、個人蔵



前頁へ   |   表紙に戻る   |   次頁へ