中世ゴシック世界への回帰は、19世紀ヨーロッパの文芸の主潮の一つとなった。とりわけヴィクトリア朝のイギリスではウィリアム・モリスがケルムスコット・プレスを興し、揺籃本(1500年以前に刊行された初期の印刷本)への関心が高まった。展示品は初期揺籃本に使われた版木と活字を用い、当時の製紙法そのままに漉かれた用紙にハンド・プレスで印刷されたもので、装釘も時代様式に倣っている。まさに19世紀英国の愛書家好みの「パスティシュ」であるが、ここでもまたすべてを「捏造」と断じきれない部分がある。 13-1 小版『貧者の聖書』 留め金具付ヴェラム装本、縦20.7、横15.6、ロンドン、アンウィン兄弟書店刊、1884年 |
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