[ニュースという物語]


大平安心之為

鹿島大明神に対し、地震鯰が平伏している図。左上の災難避けのまじない(さむはら)は現在でも使われている。横で吉原の花魁も鯰を叱責している。吉原も壊滅的被害を受け、多くの女性が圧死・焼死した。華やかな遊郭が無惨に破壊された姿は、見る者に災害の悲惨さを痛感させたに違いない。

大平安心之為
図210

大平安心之為

去ル元禄十六年十一月二十日夜宵より
電強く八ツ時より地鳴事雷乃如し大地俄ニ
ふるゐ出し家々ハ小船之大波ニうこくかごとく地二三寸あるいは四五寸さけたる
所あり 正保四年 慶安三  寛文二  宝永三  天明二 右江戸大地震
弘化四年三月二十四日信州大地震江戸も
此夜少々地しんあり今年三月八日より
善光寺開帳諸国より参けい有然るニ
浅間山ノけむり常より減たるを
あやしみゐたる処に三月二十四日ノ夜四時
俄ニ地ふるい出し 立所に人家を
たをし死する者
数しれず丹波川
水をし出し左右
湖の如し
江戸大地震夜四ツ時より地ふるい
出し土蔵かたふき人家くづるる
事おひたたしく老若男女おしに
うたれて死する者数をしらず此時
最初新吉原より出火始り程なく所々より
出火ありすべて火口三十八口たちまち
大火と成翌三日午ノ刻頃よふやく火
しずまる是か為死する者又おびたゞし
翌三日二成といへ共又もやゆりかへしあらんかと
人々所々へかり小屋をしつらい夜をあかす事
七八日之間也其後雨ふり地震よふ
やくしずまりあんどの
思ひをなす如此事ハ
実ニ前代未聞也
 此守を懐中すればけが
なし家内江もはるべし
「はりといきじがさとのならいだと申ンすが
はりをしよったのハこんどが初てでおざりいス
「ハたヤア
うなぎハ
好だがなまづを見ると
身ぶるいが
出るよ其だから地しんを
いらせるかもしれねへおあいだな
やつだねへ
「其方共
此度我等がりよふ分をさわがせ
あまつさへ人民をそんぜし其つみかろからず
右之とがニよって
かばやきニもおこのふ可也
しかしじしんの
かばやきニは
かみ
なり

香の物
でも付け
づハ成
まいか
「いやはや一々おそれ
入ました此度私共
のふらち申分はござりません本ハと申せバ
じしんの仕出した事ゆえ致
方がござりません
 

長者金の病ひ

わが身一つが財産の庶民と違い、富裕者は多くの資産を破壊された。いつの時代も「富む者は更に富み、貧しき者は更に貧しく」という不平等は同じであった。本図で、糞便や嘔吐物に例えられている金持ちの財貨は、それらが正当な手段で貯えられたのではないことを象徴している。

長者金の病ひ
図211

長者金の病ひ

どうも
かうくだつてハ
たまらないからちつと
つうじをとめやうと
おもひますがしりのしまりが
わるくなつてアレまたそろそろ
さかつてまいりました「わたくしハ
もはやはらがぺつたりとなりました
これからそろそろしまいこんで
おいたこきんでもたれずハなります
まいどうぞこれをれうぢするいしやが
ありそうなものでござるしかしこの
ひりだしましたのハかく字のはんてんや
ながばんてんでさらつてまいり
ますからわたくしどものはらあん
ばいハわるくなりますかハり
よのなかハじうぶんよく
なるそうでございます「それを
おもへバわたくしハいくら
たれてもようございます
からうんといきんでもう一ツ
おほかたまりをイヤこれハ
したりこんどハぜにばかり
こてこてでましたせけんのぜにそう
ばかやすくなるはづでございます

 

瓢箪

地震後の復興景気で儲けた三職(大工・鳶・左官)が女郎を呼んで豪遊中。一方、隣では、地震で家や蔵を失った金貸しが、貸した金の回収を心配している。本図の瓢箪で鯰を抑える図柄は、東海道の大津宿付近の土産絵である、大津絵の代表的画題「瓢箪鯰」からとったものである。

瓢箪
図212

瓢箪

あすこにおほぜいいるのハしよくにんしゆうと見へて
ごふぎといせいのいい人たちだそれハいいが
此間の大なまづでうちもくらいもいごきたしたか
サテいごかないものハかした金だ
どふか貸(かし)た金のいごく工夫(くふう)が
ありそふなものだて
「おやミなさんまいばんごさかん
さます
ねへ
「さァさァミん
なそうじ
まいだいくたりても
女郎(じよろう)を連(つれ)て
こいそして
おれにハ
一ばんいいのを
だしてくれおれを左官(さくわん)
だとおもつてかべの
おんなをだしてハ
いかねへぜコウやね吉
そんなにたかくとまるな
めかしたつてもはじまらねへ
「べらぼふめべつにたかく
とまるきじやァねへが
家根(やね)やだからあたり
めへさ「いいサそんなことハどうでも
いいからはやくけづつて
おかたづけとして
はやくさいくばへ
いこふじやァねへか
「コウべらぼうをとこ
いそぎだなァそんなに
せかずといゝじやァ
ねへか
なあ
ゑん

「よして
くれこの
ころしやァ
おれのことを
ゑんまのこと
にしきへへまで出(で)る
でているからふだんハいいが
こんなミへのばしよ
じやァそんな事ハいつて
くれるなゑんまだの
ぢざうだのとここハ
ぢごくじやァねへ
かりたくだよ


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