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受精卵へDNAを注入してトランスジェニックマウスを作る |
ヒト疾患モデル研究センターは「動物実験を通して、実証的にヒトの疾患を理解すること、およびその学理を基にしてヒト疾患のモデルを創造し研究する」ことを目的としている。マウスの卵子に精子が侵入すると、ただちに精子と卵子のそれぞれの前核ができ、卵の中央部へと移動をはじめる。そのときの様子を微分干渉顕微鏡で観察すると、この写真のように、精子と卵子からできた前核がはっきり見える。この時期に、ガラスピペットで直径約100μmの受精卵を透明帯で保持し、反対方向から先端が1μmぐらいのピペットで直接前核へDNA溶液を注入する。この写真は、雄の前核にDNA溶液が注入され、大きく膨らんでいるところをとらえている。こうしてトランスジェニックマウスは作られる。勝木元也教授写真提供。
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激しい震えを起こすトランスジェニックマウス |
勝木元也はトランスジェニックマウスを作ることにより、企図振戦とよばれる激しい震えを起こすシラバーマウスの震えの原因が、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)遺伝子の欠失であることを発見した。正常の遺伝子を持つマウスで、この遺伝子の機能を抑えるには、MBP遺伝子の発現を止めてやればよい。そこで、MBPのcDNAを逆向きすなわちアンチセンス方向に組み込み、逆向きのMBPのmRNAを発現させれば、それば正常のMBPのmRNAと複合体二重らせんを作り、MBPができないだろうと推定した。この推定は的中し、アンチセンス・トランスジェニックマウスは正常のMBP遺伝子を持っていながら、遺伝子を欠失したミュータントと同じ震えを示した。この写真はストロボ撮影で、1秒間に4回のフラッシュが焚かれている。勝木はその著書「マウス」(共立出版)の中で『このとき世界で初めて見るマウスに、みずから震えるほどに興奮したことを忘れることはできません』と書いている。
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