生命の科学

第一部

生命の科学の基礎:植物と動物


動物学の最先端

イモリの外植体 二次胚
active処理片をサンドウィッチして誘導されたイモリの外植体 active処理片を胞胚膣に挿入してできた二次胚(100ng/ml.1h)
試験管内での形づくり イモリ
アクビチン処理片の組合わせによる試験管内での形づくり イモリ activin(100ng/ml.1h)処理した外胚葉片
試験管の中での器官形成

両生類(イモリやツメガエル)の胞胚のアニマルキャップ(未分化細胞塊)にアクチビン(TGF-βスーパーファミリー、分子量2万5千)を与えると濃度依存的に様々な器官が分化誘導できることが浅島らによって発見された。アクチビンは低濃度(0.5ng/ml)では腹側の血球や体腔内上皮、中濃度(5ng/ml)では筋肉、高濃度では(50ng/ml)背側の脊索を分化誘導することができる。これは濃度依存的に分化誘導されることを示した最初の分化誘導因子である。またさらに高濃度にすると、拍動する心臓や腸管、肝臓など内胚葉分化誘導することができる。

また、アクチビン処理したアニマルキャップを胞胚腔中に入れてやるときれいな二次胚をつくることができる。これは1924年、シュペーマンらが原口上唇部を胞胚腔に挿入して行った実験をアクチビン処理片で完全に再現できることを示したことになる。このようにアクチビンは未分化細胞に対して様々な器官形成をするだけでなく、形づくりにも大きな役割を果たしていることになる。

(資料提供 浅島 誠、有泉高史)

キメラ・アホロートル
キメラ・アホロートル

アホロートルは生きた化石動物の一種で、3億年前から現在に至っている。学名はAmbystoma mexicunumといい、原産はメキシコ市の近くのコチシル湖である。このアホロートルは生きた化石生物であると同時に幼形成熟といって、進化の過程で成長を止めたものと思われており、両生類の中で進化上でも非常に重要な生物である。

今では原産地のメキシコでもほとんど野生種はいなくなっている。 このアホロートルは実験発生学や生理学などでもよく使われている。この標本はアホロートルが神経胚に発生した頃、野生型(黒色)とアルビノ型(白色)との2個体を別々に半分に切り、そして、また融合させて発生させたものである。このような生物は1個体の中に2つの異なる遺伝子を含むことになり、キメラ生物(ここではキメラ・アホロートル)ができる。動物ではキメラ生物はいくつか知られているが、両生類ではアホロートルの他にツメガエルでも報告されている。

(資料提供 森脇美武)


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