亜細亜の頃




第二次大戦終結までに海外調査が集中したのは中国大陸、南洋など東アジアの各地であった。本章では、建築学の関野貞、考古学の原田淑人、東洋史の江上波夫、人類学の鳥居龍蔵が実施した文化史系調査をとりあげ、その実状を概観する。関野の古蹟模写、原田の漢籍と文物の照合、江上の学際的隊編成、鳥居の写真術など、爾後の調査の範をなす最先端手法は大きな成果を生んだ。だが、亜細亜を駆けた彼らの大規模かつ先駆的な業績の数々が、国策に基づく時代の落とし子であったことも一方で明らかである。




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