ida:58×23×?km
dactyl (idaの衛星) :1.2×1.4×1.6km
画像の右端に見られる小さな天体が ida である
(写真提供:NASA)
隕石はその進化の度合いに応じて大きく2種類に分類される。 1つは、隕石母天体上で溶融・分化を経験していないと考えられる コンドライトである。 他は、母天体上で溶融・分化を経ている 非コンドライト (エコンドライト・石鉄隕石・鉄隕石のグループ) である。 コンドライトや多くのエコンドライトが約46億年の生成年代を示すことは、 これらの隕石が、 太陽系初期における物質の生成・分化の記録を留めていることを示している。
太陽系の出発点は原始太陽系星雲であり、 この高温の星雲がスから様々な物質が凝縮・集積し隕石の母天体ができ、 母天体上で様々な変成作用があった。 このような過程を経てコンドライトの母天体が生成した。 また、中には、かなり大きな天体にまで成長したものもあった。 そのような母天体上では、様々な熱源によって集積した物質が溶融し、 溶液の中から結晶化する過程で分化が起きた。 表層では、地球の地殻に似た原始的地殻をもった隕石母天体もできた。 惑星の特徴をもった原始的なエコンドライトの母天体である。
gaspra : 19×12×11km
(写真提供:NASA)
これらの母天体上に隕石が衝突し、その衝撃で岩石片が母天体から放出され、 軌道に乗って地球に落下したものが隕石である。 火星と土星の間には、小惑星領域があるが、これらは、 惑星になりそこなった原始惑星や微惑星の残りの物質であり、 隕石の起源をこの小惑星に求める考えが一般的である。
大きさ | 50×40×30mm |
---|---|
落下・発見年代 | Fall:1969.2.8 |
落下・発見場所 | Allende, Chihuahua Mexico |
ここに示された炭素質コンドライトはAllende隕石と呼ばれる、 最も有名で、隕石研究に最も大きな影響を与えた隕石である。 この隕石は1969年2月8日午前1時頃、 メキシコ北部のチワワ州アエンデ村に落下した。 落下にさいして、非常に強い光と爆発音が観察され、 新聞が読めるほどの光とダイナマイトが爆発したときのような 爆発音であったと記録されている。 総重量で2トンを越える隕石であった。 標本の中に球状のコンドルールの他に白色の包有物が見られるが、 この包有物はCAIと呼ばれ、 カルシウムとアルミニウムに富んだ鉱物を含み、 太陽系星雲のガスから凝縮された高温凝縮物と考えられている。 太陽系形成初期の情報を持つ炭素質コンドライトは最も始源的な隕石である。
大きさ | 20×15×5mm |
---|---|
落下・発見年代 | Fall:1855.5.13 |
落下・発見場所 | Gnarrenburg, Niedesachsen Germany |
この普通コンドライトはBremervoerde隕石と呼ばれ、 分類上H3に属する。 Hはカンラン石・輝石中の鉄・マグネシウム比や隕石に含まれる 金属鉄の量から、また3は岩石学的特徴から分類された名称である。 この隕石は1855年5月13日ドイツの ニーダーザクセン州グナレンブルグ村近郊に大音響と共に落下した。 少なくとも5個の隕石が回収され、総重量は約7.25kgである。
標本中には明瞭なコンドルールの他に金属色に輝く鉄・ニッケル鉱物が見える。 ほとんどの普通コンドライトには炭素質コンドライトに含まれていた 揮発性成分は含まれておらず、集積後に熱変成を受けたと考えられている。
大きさ | 100×100×40mm |
---|---|
落下・発見年代 | Fall:1960.10.? |
落下・発見場所 | Wiluna, Western Australia Australia |
HED隕石は エコンドライト母天体の原始地殻に由来すると考えられており、 月や地球の地殻と関連が深い。 ここに示した隕石はHED隕石の中のeucriteに分類される Millbillillie隕石と呼ばれる隕石で、 オーストラリアの西部の砂漠地帯に1960年10月に落下した (落下日は不明) 。 隕石の落下は光と共に確認されたが発見は10年後であった。 回収された隕石の総重量は少なくとも25.4kgである。 最近では、HED隕石の母天体として小惑星のベスタが考えられている。
大きさ | 15×10×5mm |
---|---|
落下・発見年代 | Fall:1911.6.28 |
落下・発見場所 | Abu Hommos, Alexandria Egypt |
SNC隕石はその岩石組織が火山岩的であることと 生成年代が13億年前と他の隕石に比べて非常に若いことなどから 火星起源の隕石であると考えられている。 隕石中の希ガス組成が火星の大気の成分と類似していることも 火星起源を支持している。 最近南極から回収された隕石の中に生物の痕跡が発見されたと 話題を呼んでいる隕石もこのグループに属している。 ここに示した隕石はNakhla隕石でnakhliteグループに属し、 SNCのNは、その頭文字から採られている。 エジプト・アレキサンドリアの近郊アブホモスに 1911年6月28日午前9時に落下した隕石で世界でも 数少ないSNC隕石の一つである。総重量は約40kgであった。
大きさ | 70×60×5mm |
---|---|
落下・発見年代 | Found:1822 |
落下・発見場所 | Atacama Desert, Atacama Chile |
石鉄隕石は、その名前のようにニッケルを含む金属鉄と珪酸塩鉱物が 共存する隕石であり、物質分化の点から重要な隕石グループであるが、 未知な点が多く残されている隕石である。 ここに示した隕石はImillac隕石で pallasiteと呼ばれるグループに属する。 金属鉄の中に大きなかんらん石の結晶が散りばめられたようにあるのが 特徴である。 この隕石は南米チリのアタカマ砂漠で1822年に発見された。総重量は不明。
大きさ | 200×120×3mm |
---|---|
落下・発見年代 | Found:1836 |
落下・発見場所 | Great Nama Land Namibia |
鉄隕石は主に鉄とニッケルの合金からなっており、 この鉱物は地球では発見されていない。 隕石母天体上での物質分化の結果、鉄・ニッケルが集まったものと 考えられる。 最大の鉄隕石は60トンに達するものがある。 ここに示した隕石はGibeon隕石で 1836年にナミビアで発見された隕石である。 1トン以上の試料を所蔵する博物館もある。 回収された隕石の総重量は10トンを越える。 鉄隕石を適切な方位で切り出し酸でエッチングすると、 ウィドマンシュテッテン組織と呼ばれる模様が見られる。
この展示内容に関する最新情報や関連資料等は、随時、
東京大学総合研究博物館のインターネットサーバ上の
以下のアドレスで公開、提供していきます。
Copyright (C) 1997 Tokyo University Digital Museum