第4章プロジェクト「サイエンス・スペクトリウム」


 本郷キャンパスの医学部2号館と薬学部の間に残されている広さ千平方メートルの空き地に学内の先端研究の現状を紹介するための展示会場を造る、というのが与えられた課題である。建設の条件は向こう3ヵ月の展示が終わりしだい現状に復元するというもの。

 ごく短期間でその使命を終える仮設の建物は、コストが安いこと、組立が簡単であること、資材を節約できることなどの理由から・既製品としてあるプレハブ建築やテントなどが利用されることが多い。ために、フォルムや建材における冒険など論外であるという風潮が強い。しかし、永続的な使用を意図して建てられる建築と異なり、一過的な使用に用途の限られるものについては、普段以上の冒険や実験が許されてよいのではないか。われわれの構想する「サイエンス・スペクトリウム」は、現在の大学空間に欠けている湾曲したフォルムの実現を通して、その日常的な光景を一気に変質させようとするものである。


 一般に高等教育研究用の施設の設計には、象徴性でなしに実用性が、冒険でなしに中庸が求められるようで、建物の外装に多少の変化はあるものの、結局のところ直線を主体とする方形の建築がキャンパスを埋め尽くすことになる。現に本郷のキャンパスもそうであり、茶系統の焼タイルで被われた直方体の建物ばかりが目立っている。

 「サイエンス・スペクトリウム」では、建物は鉄骨構造をベースに、床は板張り、天井と壁体はピュア・ホワイトを基調とする。採光は軽合金と透明アクリルの組み合わせからなる開口部を通して差し込む自然光を主体とする。パネルで遮蔽して得られる間接光、天井からの拡散されたトップライト、壁体の各所に設けられたスリットから差し込む直接光の3種の光が混淆する内部空間は、ピュア・ホワイトの壁面の反射効果も手伝って・文字通りの光の殿堂と化すことだろう。すべてがボルトとナットで組み立てられるため、組立と解体は容易である。(西野)

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表示塔素案
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13-1a,b,c,d,e,f,g,h,i,j サイエンス・スペクトリウム素案  13-2a,b,c サイエンス・スペクトリウム雛形


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