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陶俑・木俑・土俑

(中国)


34 天王像


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塑造彩色
中国
唐時代(8世紀)
高さ69.0cm
文学部考古学研究室・列品室

眉根を寄せて目をいからせ大きな口をわずかに開いて忿怒の形相を浮かべる。右腕を頭の後側に振り上げ、左腕は目線の先に捉えた外敵を抑えつけるように斜め前方に突っ張り、腰を大きく左にひねって、仰向けになった邪鬼の頭を右足で、腹を左足で踏み据えて立つ。右手の拳には穴があいており、当初は持物(武器)が挿し込まれていたと思われる。

頭に被った兜は前立飾りをはじめ幾つかの装飾がつき、耳を覆う部分は外向きに翻っている。身体に纏った鎧は、頚護、龍頭形の被膊、前胸円護、腹護、護臍円護、骸尾、膝裾、吊腿などからなるいわゆる唐甲制によるものである。

白下地の上に施されていた彩色はかなり剥落しているが、眼の墨彩、甲に朱で描かれた文様などがわずかに残存している。

ずんぐりとした体部に比して頭部がかなり大ぶりにつくられ、全体にやや形式化した表現ながらも、頬から顎にかけての豊かな肉付けや、下半身の纏った衣をリズミカルに反転させるなど工夫を凝らした造形は、敵を威嚇するようなしぐさや恐ろしい形相とあいまって、天王像本来の迫力をよく表わしたものとなっている。

(小泉惠英)


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