青銅製
中国
後漢〜呉時代(3世紀頃)
直径12.1cm、重さ269.7g
文学部考古学研究室・列品室
同向式神獣鏡である本鏡は、各単位図像が同一方向からみるように配置されている。鈕の上下および左右に神像5体が配列され、神像間に獣形4体が置かれる。
神像については、鈕の左側の一体のみ正面を向く坐像であり、他は体を右あるいは左に向ける坐像である。いずれも二重線で表現されるV字形の衿から羽状のものが左右から上方に伸び、下半身の袂には輪郭線の内側に弧線が充填される。上段左側の神像および下段の神像は三山冠を被っている。上段の神像は弾琴の伯牙、鈕の左右の神像は東王父と西王母、下段の神像は黄帝を表現しているとされるが、細部の表現は斉一的であり、神仙の個性を際立たせようとする意図はみられない。また、上段の獣形は外側を向き、下段の獣形は内側を向いており、定型的である。
主紋様の外周には半円方形帯をもつ。半円形の内側には変形した渦紋がみられる。方格内の銘は判読できない。内区外周の斜面には外行鋸歯紋帯を配す。外区には時計回りに銘帯をめぐらせるが、いずれも本来の字形から変形しており文章としての判読は困難である。また、鏡縁の外周に「将軍□□司□□□□□」の文字が線刻されているが、線刻の時期は不明である。
なお、鏡背面の一部に、鋳上がりの不鮮明な部分や、鋳型の亀裂の痕跡が認められる。鈕孔は下(鏡背面を上にして水平に置いた場合)の平らな半円形状を呈している。
(犬木 努)