⇒ 全標本リスト
序文
須田孫七は長年に渡り収集してきた約10万点の昆虫標本を2003年5月に東京大学総合研究博物館に寄贈した。これらの標本群は1940年代から収集されたものが中心となっている。
このコレクションの特徴は、鱗翅目や鞘翅目など特定の分類群のみではなく、昆虫全般に渡る各分類群が網羅的に収集されていることである。収集地域は北海道から南西諸島に至るほぼ日本列島を広くカバーしており、その中には現在では収集不可能あるいは困難な種、地域の標本も多数含まれている。
特に東京都域の昆虫を過去から現在に至るまで網羅的・継続的に収集した標本資料はほとんど現存しておらず、開発などによって改変著しい東京都の昆虫相の変遷を知ることができるという意味で価値が高い。また、図鑑や調査報告書など学術出版物の根拠となる標本も多数含まれている点も特徴である。
寄贈後、須田孫七は本館協力研究員となり標本の整理に努める一方、須田真一とともにデータベース化を進めている。これにより収蔵標本の館内外の活用がはかられる運びである。この活動の成果は一定の水準に達したものから逐次収蔵目録として出版公開する予定である。しかし、データベース化か完了したものについても、標本点数が少ないなどの理由により、出版に至っていないものがある。これらについてはweb上での公開を先行させることにより、いち早く館内外の活用に供することとした。
本データベースにおける標本登録番号は、須田孫七が付した「Suda Coll. No.」をそのまま用いた。本館に寄贈された以降の標本登録作業においても、この番号を引き継いで行っている。性別は判別したもののみについて表記し、不明な場合は「ex」と表記した。採集地は最も正確に採集地点を表すことができる日本語表記とした。基本的に採集当時の行政区分や地名で表記したため、現行のものとは異なる場合がある。また、行政区分界に位置する場合や地名の変遷、ラベルの不備などにより十分な考証ができなかったものについては判明した範囲で表記、あるいは現行の地名を用いて示してある。採集年月日については、西暦・月・日の順で表記し、不明の場合は「**」で示した。なお、標本に付されているラベルがローマ字表記となっており、採集地、採集者名の十分な考証ができなかったものについてはローマ字綴りのまま表記した。
本データベースを編纂するにあたり、山崎誠氏、須田(西口)有紀氏には標本整理およびデータベース入力、地名考証、編集作業について、桶田太一氏には標本の写真撮影について多大なる貢献をしていただいた。また、データベースの作成には科学研究費補助金「研究成果公開促進費・データベース」と本館のプロジェクト経費の支援を受けた。
なお、東京大学総合研究博物館所蔵の昆虫標本および本データベースを使用して研究を行い、その成果を公表する際は標本登録番号および出典を明記し、公表に関する情報を本館に連絡いただくようお願いいたします。
2009年1月
須田孫七、須田真一、高槻成紀