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尾本惠市チョウ類コレクション目録1(アゲハチョウ科:ウラギンアゲハ亜科・ウスバシロチョウ亜科)

Omoto1Authorjp

緒言

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尾本アゲハチョウ

東京都出身である尾本惠市博士(1933年〜)は、1952年東京大学に入学し、1972年に東京大学で理学博士号を取得、1979年から東京大学理学部教授を務めた。1993年から1999年まで国際日本文化研究センター教授として職責を果たし、その後は桃山学院大学教授などを歴任した。東京大学および国際日本文化研究センターの名誉教授でもある。専門は分子人類学であるが、チョウ類の研究者としても著名で、特にウスバシロチョウ亜科の系統分類学的研究では大きな成果を挙げている。また、1961年から1964年までドイツに留学し、滞在中の1963年にアフガニスタンのヒンドゥークシ山脈で2ヶ月半ほどチョウ類調査を行い、アウトクラトールウスバシロチョウやマルコポーロモンキチョウのような珍種を自身の手で採集している。将棋に対する造詣の深さでも知られる。

尾本コレクションの標本総数は約27,000点で、マルコポーロモンキチョウの亜種クシャナをはじめ、新種・新亜種の記載に用いられたホロタイプ標本9点を含む多くのタイプ標本が収納されている。収集の重点は、ユーラシアやアメリカ北部、オセアニアに産するアゲハチョウ科のウスバアゲハ亜科、シロチョウ科のミヤマシロチョウ属・モンキチョウ属、タテハチョウ科のコムラサキ亜科、ジャノメチョウ亜科などの研究用標本である。本コレクションは2013年に東京大学総合研究博物館へ寄贈された。

現在、東京大学総合研究博物館では、収蔵されている昆虫コレクションのデータベースを作成して、出版物やウェブ上に公開発信する計画(UMDBプロジェクト)が進められている。この尾本チョウ類コレクション目録も本プロジェクトの一環として行なわれたもので、アゲハチョウ科ウラギンアゲハ亜科・ウスバシロチョウ亜科の登録作業が完了したために、このパートの目録を本館HPのウェブミュージアムに公開することにした。この目録にリスト化されている標本群は大型ドイツ箱80箱に計5,425点が収録されている。

このようなデータベースには、分類学や体系学、形態学のような分野に多大な貢献が見込まれるだけでなく、生物多様性保全の基礎となるインベントリー(目録)作成としても捉えられる。分布情報を活用することで、生物地理学の他、地球温暖化や森林伐採、環境破壊のような環境問題を考える上での基礎的情報も多く提供されうる。本データベース公開により、国内外の様々な分野の研究に寄与し、学術標本やミュージアムコレクションの重要性を公共の場に広く認知させるものとなることができれば幸いである。


謝辞

本目録を作成するにあたり、Neil Moffat氏には英文校閲でお世話になった。心よりお礼申し上げる。