第2部 展示解説 動物界
以下は正獣下綱である。 無盲腸目 : 細長い吻と鋭い歯をもち、四肢は短く掌をつける蹠行性のものが多い。かつて食虫目とされて いたグループのいくつかは独立すべきとされたため、再編成が必要になった。このグループはオーストラリアと南アメリカを除く世界中に分布する。 6科に 300以上の種が含まれる。モグラ類は地中にすみ、ミミズを専門的に食べるが、土を掘るためによく発達した鈎爪と前肢がよく発達し、手のひらのわきには補助的な骨 (鎌状骨) がある。この腕は大きな胸骨と強力な筋肉によって効果的に動かされる( 図 33)。これより小さいトガ リネズミの仲間も含めて、日本には 19種がいる。ナミハリネズミ Erinaceus europeus ( ハリネズミ科 ) はヨーロッパに分布し体中に針のある小型の哺乳類で ( 図 34) 、ミミズをはじめとする小動物を食べ、鋭い歯をもつ。針は体毛の変化したもので硬く、鋭く、中空である。日本で、は最近ペットとして輸入されたハリネズミが一部で野生化している。トガリネズミ科のワタセジネズミ Crocidura horsfieldi watasei はオナガジネズミの亜種で、南西諸島に分布する ( 図 35) 。和名の「ワタセ」 は渡 瀬線で有名な渡瀬庄三郎にちなむ。渡瀬線は屋久島・ 種子島と奄美諸島とのあいだの生物分布境界線で、こ れにより北は旧北亜区に南は東洋亜区に分けられる。
ソレノドンはキューバとイスパニオラ島にしかいない哺乳類で、森林にすみ、無盲腸目としては大きく、体重数百 g で、ある。鼻先が非常に長いのが特徴的であるが、 この部分は軟骨質で、顎骨と球窩関接によって結合し ているために自由に動かすことができる。ハイチソレノドン Solenodon paradoxus ( ソレノドン科 ) は鼻先の部分がない ( 図 36) 。きわめて特異なことに下顎門歯は毒蛇のそれのように管状となり、そこに有毒な唾液を分泌する。歯の数は 40 本もある。おもに昆虫などの小動物を食べるが、両生類や腿虫類も食べる。 テンレック科はアフリカに分布する 30ほどの種からなる科で、このうちテンレック類はマダガスカルに固有である。このグループは哺乳類では例外的に変温性であり、総排出腔をもつ ( 尿と糞を同じ管で排出する)、オスの精巣が下降しないなど、初期の有胎盤類の性質を もつ。ハリテンレック Setifer setosus( 図 37) はハリネズ ミによく似ており、体に針状の毛をもつ。産子数は 10頭以上で乳頭が 30近くもある。おもに小動物を食べるが、雑食性で植物質も食べる。
Copyright 2004 The University Museum, The University
of Tokyo
|