第2部

展示解説

鉱物界

REGNUM LAPIDEUM

 

石英の起源は鉱物学者の間で最も不確かな問題であった。
石英は他の石の空洞の中で造られ、そこから成長する。
岩石から発散し、岩石の空洞の中で造られ、そこから成長する。
おそらく、時折は空気によって手助けされながら
岩石の表面にできはじめ、成長し続けるのであろう。

リンネ「自然の体系」から

 

鉱物は非生物である。鉱物は一定の化学組成をもつ固体の無機 物質で、その中では構成する元素の原子が規則正しく配列している。 その組み合わせが変われば異なった鉱物となる。
鉱物は環境の変化によって別の鉱物へと変化する。自己複製によって「結晶成長」するが、それは生物に特有の遺伝のしくみとはまったく異なっている。鉱物の生成と成長は、温度や圧力、元素 の分布などの物理的・化学的な条件に支配されている。

地球の形成以来、地球の表層部である鉱物界−地殻−は大気と 水と共に生物に環境を提供し、その誕生と進化を支えてきた。植物も 動物も鉱物界の一員である土壌なしには存在しえない。鉱物界は 植物界、そして動物界を育み育てるものである。

 

 

鉱物 部門紹介

 

鉱物部門

 理学部地学科鉱物学教室が収集した日本産の鉱物標本を約2万5千点収蔵する。 中でも著名はコレクションが「若林鉱物標本」である。 その一部は「和田鉱物標本」展で公開された。また「非南極隕石」コレクション は450点を超え、非南極隕石としては日本最大のコレクションであり、「隕石」 展で公開された。鉱物標本を中心に各種の所蔵標本のカタログ化は進行しつつ あり、資料報告として出版されている。神岡展、クランツ標本点、 Systema naturae展などの展示に所蔵標本を提供した。


岩石・鉱床部門

 理学部地学科地質学教室の教官が研究教育の過程で収集した岩石および鉱石標本を約5万点収蔵する。岩石標本にあっては、火山岩・変成岩・深成岩など国内外から収集され、また鉱石標本は黒鉱・鉱脈・スカルンなどの成因別に収集されている。ほとんどの標本は二度と採集が不可能な貴重な標本である。鉱石標本の 目録は資料報告として出版されている。「クランツ標本」展では、明治期の教育研究を支えたドイツのクランツ社から導入された標本が展示された。 「石の記憶」展の被爆資料は地質学の教授であった渡辺武男が調査・収集した標本である。


鉱山部門

 主として工学部地球システム工学科が明治以来の教育研究活動の過程で収集してきた鉱物資源の標本を収蔵している。人間社会に有用な金属・非金属資源である鉱石を中心に成因別に整理されている。国内外の鉱山からの標本は1万点を越す。ほとんど全ての日本の鉱山は既に閉山されており、本部門が所蔵する鉱石標本は貴重である。「Syatema naturae」展では、そのコレクションの一部を公開し鉱石の成因の多様性を示した。


地理部門

 理学部地学科地理学教室が収集した明治以降の地図3万点、航空写真約2万点を収蔵する。貴重な標本として伊能忠敬による「伊能中図」を8図幅の内で7図幅所蔵しており、「北の異界」展で一部が公開された。その他、戦前の中国や東南アジアの地形図など貴重は標本が存在する。地図帳のカタログが資料報告として出版されている。

田賀井 篤平

 

 

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