II カンパーニア地方とルカーニア地方の
墓建築と葬祭絵画


43  第123(“タランド”)墓—スピナッツォ墓地:
    Fig.123-124    Pl.51-52

カンパーニア地方:この地方の主として前4世紀後半と前3世紀初頭と年代比定される葬祭絵画は、特にクマエ、カプア、ノーラおよびナポリに集中している。イコノグラフィー的には最初に挙げた3都市では、主に故人を記念しての葬祭競技といった画像入りの主題が優勢である。他方、ナポリ旧市街のクリスタッリー二地下墓に代表される、マケドニアの影響を受けたヘレニズム初期の地下型墓室墓の一群では、絵画で"壁に掛けられた"巻蔓や高価な金属容器が表現され、さらに数多くの銘文が例証される。ナポリのこれらの地下墓では、豊かな装飾の施されたファサード建築が特徴的である。カンパーニア地方およびその東隣のヒルピニア地方ではこの他、マケドニアに由来する特色豊かな半円ヴォールト天井を備える構築された墓室墓が数多く例証されるが、サンタ・マリア・カプア・ヴェーテレのローマ円形劇場の隣に復元された墓では、その特色が非常によく把握される。

Fig.123 ナポリ:クリスタッリーニ地下墓:下部の墓室
(コルゴネイオン、コーニスと片蓋柱で区分された壁面、巻蔓文の絵画、彩色装飾寝台):
前300年頃
Neapel,Ipogeo Cristallini,untere Kammer mit Gorgoneion,Wandgliederung mit Gebälk und Pilastern,Rankenmalerei und bemalten Klinen:um 300v.Chr.


Fig.124 サンタ・マリア・カプア・ヴェーテレ:復元された半円ヴォールト天井の墓室墓
(カプア近郊サン・プリスコ出土):前4世紀末/前3世紀初頭
S.Maria Capua Vetere:Wieder aufgebautes tonnengewülbtes Kammergrab aus S.Prisco bei Capua,Ende4./Anfang 3.Jh.v.Chr.





44  ルカーニア地方:      Fig.125    Pl.53-56
葬祭絵画に関して言えば、前5世紀末から前3世紀初頭にかけてのルカーニア土着文化時代にこの地方の"首都"であったのは、画像入り絵画の豊富なレパートリーを例証するパエストゥムとその影響圏に他ならない。一般的には各地域の上層階級だけが所有出来た墓室墓は、例えばロッカグロリオーザやメルフィといったルカーニア土着諸都市、ならびにイオニア海東沿岸のギリシア植民都市メタポントでも知見されるが、メタポントのクルチーニアのネクロポリスでは、格天井を備える墓が1基例証される。

Fig.125 タポント:クルチーニア墓地;墓室墓の格天井:前4世紀後半
Metaponto,Crucinia-Nekropole:Kassettendecke eines Kammergrabes,2.Hälfte 4.Jh.v.Chr.