II エトルリア葬祭絵画のキャンバス写真 |
これらの写真は前述の“エトルリアの壁画(東京1985、岩波書店)”の図版のために当時写真家岡村崔氏によって撮影されたものであるが、後に多くの写真が原寸大に引き伸ばされ、ローマのヴイッラ・ジュリア博物館、また日本の河口湖美術館および東北芸術工科大学における展覧会で公開された。その中から主要な作品を選択展示する(ns.25,28,29以外は原寸大;現在は河口湖美術館に保管)。 |
16 ヴェイオ、家鴨の墓、奥壁: Fig.74 エトルリアで現在知られる葬祭絵画では最古の例証である。5羽の家鴨のフリーズが赤、黒、黄色を基色として同時期の陶器画によく見られるいわゆるイタリア幾何学様式で描出されている。 前7世紀第2四半期;長さ3.10m;高さ2.30m;EM n.175. |
Fig.74 ヴェイオ:家鴨の墓:奥壁 Veio,Tomba delle Anatre:Ruckwand |
17 タルクィニア、パンテーレの墓、奥壁: Fig.75 タルクイニアで現在知られる最古の、東方化様式後期エトルリア・コリントス様式の葬祭絵画である。白地に黒と赤で、猛獣頭部をかたどる仮面とその上に足をかけ向き合う大型の豹2頭が描出されている。 前6世紀初頭;長さ約2.5m;高さ約2.5m;EM n.96. |
Fig.75 タルクィニア:パンテーレの墓:奥壁 Tarquinia,Tomba delle Pantere:Ruckwand |
18 タルクィニア、烏占い師の墓、奥壁: Fig.76 タルクィニアの大画像式葬祭絵画の中では最も古い例証のひとつである。中央には大きな偽扉、その両側面には悲嘆にくれる有髭の男(恐らく神官)各1人、その上の破風には動物格闘図が描かれている。質的に極めて優れたこの絵画はアルカイック後期の作品で、イオニアからの強い影響が明らかである。 前520年頃;長さ2.60m;高さ1.90m;EM n.42. |
Fig.76 タルクィニア:鳥占い師の墓:奥壁 Tarquinia,Tomba degli Auguri:Ruckwand |
19 タルクィニア、牝獅子の墓、奥壁: Fig.77 この絵画もタルクィニアの大画像式葬祭絵画では初期の主要作に数えられる。アルカイック後期イオニア様式時代の作品で、彩色円柱の描出により墓室全体が園亭風の雰囲気である。男女の踊り手と楽士達の情景の中央には、蔦葉装飾のある大型クラテール、腰羽目にはイルカの飛び交う波頭文フリーズ、破風には赤い牝豹2頭(墓名は豹を獅子と見まちがえたもの)が描かれている。 前520年頃;長さ2.91m;高さ2.10m;EM n,77. |
Fig.77 タルクィニア:牝獅子の墓:奥壁 Tarquinia,Tomba delle Leonesse:Ruckwand |
20 タルクィニア、狩り・と漁りの墓、奥壁: Fig.78 アルカイック後期の生気あふれる鮮やかな色彩の葬祭絵画であるが、強い自然主義的傾向に特徴がある。海景には漁獲や狩猟の営みが写実的に描かれ、破風には貴族の夫婦の集う宴会場面が見られる。 前510年頃;長さ3.32m;高さ2.00m;EM n.50. |
Fig.78 タルクィニア:狩りと漁りの墓:主室:奥壁 Tarquinia,Tomba della Caccia e Pesca:Ruckwand der Hauptkammer |
21 タルクィニア、男爵の墓、奥壁: Fig.79 Pl.18 アルカイック後期イオニア様式の質的に極めて優れた作品である。中央の人像グループ(トゥトゥルスを被った優雅な女、キュリックスをもつ有髭の男および若いフルート奏者)を挟んで両側に馬に乗る青年各ひとりが描出されている。月桂樹林の中での出会いの情景であるが、神話的なものも含め様々な解釈がある。破風にはヒッポカンポスとイルカが対称的に描かれている。 前510/500年頃;長さ3.88m;高さ2.38m;EM n.44. |
Fig.79 タルクィニア:男爵の墓:奥壁 Tarquinia,Tomba del Barone:Ruckwand |
22 タルクィニア、豹の墓、奥壁: Fig.80 アルカイック後期からクラシック初期にかけての最も有名な例証のひとつである。3寝台に集う、女性も参加する宴会場面で多くの人物像が描かれており、コントラストに富む鮮やかな彩色が特徴的である。破風には大型の豹2頭の描出がある。 前480/470年頃;長さ3.30m;高さ2.16m;EM n.81. |
Fig.80 タルクィニア:豹の墓:奥壁 Tarquinia,Tomba dei Leopardi:Ruckwand |
23 タルクィニア、第5513墓、奥壁: Fig.81 クラシック初期の葬祭絵画であるが、恐らく有名なトリクリニオの墓と同じ工房の制作に帰せられる。破風には対称的に向き合う獅子2頭、宴会場面には2台の寝台に集う活発な身振りの参加者達(衣装の中で強い緑色が際立つ)、また多数の容器の載ったキュリケイオンのそばには従僕が描出されている。 前5世紀中葉;長さ3.41m;高さ2.18m;EM n.162. |
Fig.81 タルクィニア:第5513墓:奥壁 Tarquinia,Tomba 5513:Ruckwand |
24 タルクィニア、青い魔神の墓、右壁: Fig.82 1986年にタルクィニアのモンテロッツィ墓地を通る市道の下から発見されたクラシック期の墓であるが、右壁に葬祭絵画としてはエトルリア魔神の最も古い描出が発見されたことで話題を呼んだ。壁面左から、ギリシアの彼岸への渡し守ヒャロンが小舟でふたりの魔神のいる冥界に到着した情景、次に岩の多い風景に蛇をもつ魔神と有翼の魔神が描かれている。 前400年頃;長さ6.10m;高さ2.70m. |
Fig.82 タルクィニア:青い魔神の墓:右壁 Tarquinia,Tomba dei Demoni Azzurri:rechte Wand |
25 タルクィニア、オルクスの墓I、右壁(部分): Fig.83 エトルリアのクラシック後期の最も有名な葬祭絵画のひとつである。エトルリアの美しい貴族婦人ヴェリアの、葉冠、頸飾り、耳飾りをつけたプロフィールであるが、右壁にある宴会場面の一部をなす。墓の所有者については、(スプリンナ家?ムリーナ家?)まだ専門家の間で意見の一致をみない。 前4世紀第2四半期;右壁全体:長さ5.14m;高さ2.07m;EM n.93. |
Fig.83 タルクィニア:オルクスの墓I:右壁部分 Tarquinia,Tomba dell'Orco I:Detail der rechten Wand |
26 タルクィニア、楯の墓、奥壁(部分)および右壁(部分): Fig84−85 Pl.19-21 貴族ヴェルカ一族に属したこの有名な墓は、タルクィニアで最も大きな墓室墓のひとつに。数えられる。主室には冥界で展開する宴会と行列の場面が描かれており、奥壁(部分)には宴会に集う墓の所有者ラルトゥ・ウェルカとその妻ウェリア・セイティティが団扇を持った小さな召使女とともに描出されているが、その上には輝かしい履歴を示す銘文が記されている。右壁(部分)にはやはり宴会中のラルトゥの両親、ウェルトウール・ウェルカとラウントゥ・アプルトゥナイがふたりの楽士に囲まれている。 前4世紀第3四半期;奥壁全体:長さ5.85m;高さ2.60m;右壁全体1長さ6.70m;高さ2.13m;EM n.109. |
Fig.84 タルクィニア:楯の墓:奥壁部分 Tarquinia,Tomba degli Scudi:Detail der Ruckwand |
Fig.85 タルクィニア:楯の墓:右壁部分 Detail der rechten Wand |
27 タルクィニア、ジリオーリの墓、奥壁: Fig.86 タルクィニアのヘレニズム初期の最も重要な例証に数えられるこの墓は、貴族ピーニエ家に属した。壁面に巡らされた、明暗効果によって非常に彫塑的に表された武具フリーズが、墓所有者とその一門の戦功を強調している。 前300年頃;長さ5.75m;高さ2.05m;EM n.69. |
Fig.86 タルクィニア:ジリオーリの墓:奥壁 Tarquinia,Tomba Giglidi:Ruckwand |
28 チェルヴェテリ、浮彫りの墓、奥壁: Fig.87 カエレ(チェルヴェテリ)のバンディタッチャ墓地にあるヘレニズム初期の最も豪華な墓で、マトゥーナ家の所有であった。壁面と支柱が彩色漆喰レリーフで飾られており、中央アルコーブの寝台に葬られた主被葬者が特別に強調されている。 前4世紀末;長さ6.50m;高さ2.65m;EM n.9. |
Fig.87 チェルヴェテリ:浮彫りの墓:奥壁 Cerveteri,Tomba dei Rilievi:Ruckwand |
29 チェルヴェテリ、浮彫りの墓、奥壁: Fig.88 夫婦像:チェルヴェテリ出土の有名なテラコッタ棺を飾る横臥像であるが、アルカイック後期のイオニア様式が特徴的である。 前520年頃;ヴィッラ・ジュリア博物館蔵 |
Fig.88 チェルヴェテリ:テラコッタ製夫婦像 Terrakotta−Ehepaarsarkophag aus Cerveteri |