I エトルリア葬祭絵画のファクシミリ(複製画)、透写図、
  線描画および水彩画、またそれらと関連の深い古書

(在ローマ、ドイツ考古学研究所図書館古文書資料室蔵)

6  タルクィニア、クエルチョーラ(樫)の墓I:      Fig.48    Pl.9

カルロ・ルスピによる縮尺された(1:25)水彩着色の鉛筆画である(1831;40×37cm)。1830/31年冬にトリクリニオの墓とクエルチョーラの墓Iが発見されると、当時の考古学情報研究所の秘書エドアルド・ゲアハルトはルスピにそれらの装飾絵画の水彩模写を委託し、それをもとに完成された銅版画は“未公表の記念物(I,1831,33)”に、ゲアハルトとルスピの論評は同研究所の年報(1831,pp.313ff,325ff)に発表された。 この非常に面積の広い墓は、上下2段に重ねたフリーズで装飾されており、上部の大型フリーズは宴会、音楽、舞踏の情景によって伝統的な印象を与えるのに対し、下部の小型フリーズは狩猟や運動競技の場面によって生き生きと活力に満ちた発達した様式を示している。

前5世紀末;墓室の大きさ:長さ5.37m;幅5.14m;高さ3.05m;ME p.170f.,ns.36,37;EM n.106.

Fig.48 タルクィニア:クエルチョーラの(樫)墓I:奥壁、前壁、左右壁
Tarquinia,Tomba Querciola I:Ruck-,Eingangs−und Seitenwande



7  タルクィニア、狩りと漁りの墓:      Fig.49    Pl.10

カルロ・ルスピによる墓の平面図と絵画の鉛筆ないしインクを使用した縮尺線描画であるが(1832;53×37.5cm;平面図1:40;絵画1:8)、水彩着色されている。もはや墓が消失してしまっている今日、発見直後に完成された線描画の記録的価値は絶大である。 アーネ一族に帰属するヘレニズム期の墓であるが、その絵画は質的に凡庸であり、4人物像による冥界到着の場面が描出されている。ハンマーを手にするのはふたりのエトルリア魔神であり、アーチ型の門扉は明らかに冥界の入口を象徴している。

前3世紀後半/前2世紀初頭;墓室の大きさ:長さ323m;幅3,69m;高さ1.85m;ME p.196ff.,n.XV;EM n,107.

Fig.49 タルクィニア:クエルチョーラの(樫)墓II:平面図と右壁
Tarquinia,Tomba Querciola II:GrundriB und rechte Wand



8  タルクィニア、オルクスの墓:      Fig.50−57

ルイス・シュルツによるトレース紙になされた炭塵透写12点である(1869;人像頭部11点;手1点):オルクスの墓I:ヴェリア(21.5×24.5cm);カルン(28×41.5cm);少年と男(7×17cm);手(10×16cm)オルクスの墓II:ペルセフォネ(32×28.5cm);ハーデス(27×42cm);アガメムノン(27.3×32cm);従僕と“クーピド”(25.5×42.5cm);ペイリトース(13.3×25.5cm);テセウス(25×27.5cm)有名なオルクスの墓集合体は1869年の春に発見され、同年11月には考古学情報研究所のドイツ人線描家ルイス・シュルツに壁画の縮尺された水彩模写および主要画像の頭部透写が委託された。その記録は“未公表の記念物(IX,1870,Pls.XIV,25,XV)”に発表されたものの、水彩模写はその後消失したため、現在保存されているのは炭塵透写のみである。後に中間部を開くことにより互いに連絡するようになったオルクスの墓IとIIは、異なる時期に成立したもので、残念ながら部分的にしか残存しないクラシック後期の質的に非常に優れた絵画で装飾されている。古い方のオルクスの墓Iでは恐ろしいエトルリア魔神カルンも描かれた冥界における宴会場面が見られるが、それより年代の下るオルクスの墓IIには冥界の主神ハーデスとペルセフォネ、ギリシア神話の英雄達、またエトルリア魔神の表されたネキュイア(冥界風景画)が描出されている。

前4世紀第2ないし第3四半期;墓室の大きさ:オルクスの墓I:長さ5.14m;幅5.46m;高さ2.50m;オルクスの墓II:長さ5.80m;幅6.10m;高さ2.75m;ME p.176ff.,n.XII;EM ns.93,94.

Fig.50 タルクィニア:オルクスの墓I:右壁部分:ヴェリア
Tarquinia,Tomba dell’OrcoI:Detail der rechten Wand mit Velia


Fig.51 タルクィニア:オルクスの墓I:翼壁部分:カルン
Detail der Ruckwand mit Charun


Fig.52 タルクィニア:オルクスの墓I:奥壁部分
Details der Ruckwand


Fig.53 タルクィニア:オルクスの墓II:奥壁部分:ペルセフォネ
Tomba del’OrcoII:Detail der Ruckwand mit Persephone


Fig.54 タルクィニア:オルクスの墓II:奥壁部分:ハーデス
Detail der Ruckwand mit Hades


Fig.55 タルクィニア:オルクスの墓II:左壁部分:アガメムノン
Detail der linken Wand mit Agamemnon


Fig.56 タルクィニア:オルクスの墓II:右壁部分:従僕と“クーピド”
Detail der rechten Wand mit Dienerknabe und“Eros”


Fig.57 タルクィニア:オルクスの墓II:右壁部分:ペイリトースとテセウス
Detail der rechten Wand mit Peirithoos und Theseus