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[新聞錦絵の情報社会]


大阪錦絵新話 第二号

(川に落ちた車夫と女客が助けられる)
前者と同じく、赤い囲み枠と縦長の題号を天使が支えるデザインを用いているシリーズ。この号は版元が阿波文で、絵と文章が笹木芳瀧である。大阪の新聞錦絵では、しばしば絵師が文を書く役も兼任した。当時の大阪の町並みがうかがえる絵である。

大阪錦絵新話 第二号

長堀/末吉橋通り/丼池の。川に男女が/さけぶ聲。助けて/暮すぎ八時頃。暗夜の/ことに雨ふりで。しかとハしれねど/情死の。仕損じならんか助けんと。/かけつけたるハ真意の。名も善七が/眼をとめて。見れバ人力車ゆへ。引上ん/とてあせるうち。巡吏何某はせ来り/やふやふ車助けあげ。様子を聞けバ車/夫ハ第六大区一小区中木亀吉といふ者にて/客ハ高津町四番町松井熊吉が母ことにて/てうちんの灯が消より。路を失ひ川中へ/車を曳込ミ/たりしとハ。向ふみづ/とハいいながら幸ひに/して善七と。巡吏/とが折よくも来た/られしこそ助りしなるべし/あぶない事あぶない事/

笹木芳瀧/併画

大阪錦絵新話 第二号
図115

大阪新聞錦画 第十五号

大阪新聞錦画 第十五号

(盲目の父に娘二人が親不孝)
同じく、縦長の題号を天使がかかえるデザインが使われているが、本為・本安の共同出版によるシリーズ。絵師は二代目長谷川貞信で、この号は『読売新聞』百二十二号の記事によるもの。新聞錦絵には孝行な息子娘の話が多いが、こうした逆の例も反面教師として描かれた。

大阪新聞錦画 第十五号

東京神田錦町一丁目に姉をかまといい/妹をてるといふ二人りの女父ハ幸手宿の/萬や弁次郎と云て生来親切な人なるが/いかなる前世の約束やら女房にわかれて後ハ/眼がつぶれ頼みとするハ子供二人りそれに娘の/不心得盲人の長命邪魔になる三度の食事の厄介を/親に向ふて悪口雑言終にハ我家をあとにする親ハ泪に/くれぬ日とてハなく聞ても/腹のたつ咄叢出し二疋の/けもの生捕まして面の皮はぎと/会の水にさらしたきアア浅ましき人面/獣心孝の一字を二ツにわけても合点のゆかぬ/無論者憎むべしまた歎くべきと読売百二十二号ニ出せり

図116

諸国日々新聞集 第二百七十四号

(犬が掘り出した男女の腕を井戸端へ)
このシリーズは、上辺にある横長の題号を天使が支えているのが目印で、表題だけが『大阪日々新聞』となっている異版がある。版元は川伝で、絵師は柳桜茂広。号数の数字が大きいが、二百三十号以前の号は確認されていない。

諸國日々新聞集 第二百七十四号

南堀江下通三丁目/清水栄蔵の支配地/裏長屋有井戸端/凡六七十日間を経たる男女分ら/さる左りの腕臂より/切たる有隣家/より水を汲に/来て之を見て大ニ/驚き伍長ニ告伍/長之を官へ訴たりと/真に奇怪の事にあらずや/東京新聞ニ小児の/腕を犬のくハへ来りし/話あり是埋葬の/疎なるより犬の掘/出せしなるべし若/費エを厭ハバ自ら/其労を勤て可也/因て此事を記して/不信の者を戒ト有

柳桜記

諸國日々新聞集 第二百七十四号
図117

大阪錦画日々新聞紙 第二十四号

大阪錦画日々新聞紙 第二十四号

(男として七年暮らした女)
前者と同じデザインで、やはり綿喜と富士政の共同出版によるシリーズ。絵師は二代目長谷川貞信。この号は『読売新聞』百六号の記事に基づく。女装した男、あるいは男装の女というのは、新聞錦絵にしばしば登場する話題である。

大阪錦画日々新聞紙 第二十四号

明治八年五月十八日東京芝西應寺町/尾張や勝五郎に身をよせる人力車曳の/時次郎といふハ高輪辺にあり/頃損料/ふとんをかり/ながらかへ/さぬ催促/日々きびしく/師に高輪へつれ/ゆかれ起す短気の損料や/時次郎を縄にしばり打擲なして追放されその面目に/芝将監ばしより身を投んとせし折もおり時次郎巡査に助けられし/其原籍を糺してミれバ甲州より出たる女にて男姿となりわひに/厩の飼士喧嘩の先だち藝妓の筥まで廻わしまわつた七ヶ年妙な女と/云ながら女が男の姿となり男が女と身をやつすなど外に悪いことがなふ/てもお巡査につれてゆかれますふれた事ハこころへたしと読うり百六号ニ出

図118


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