[The University Museum]

粘土水簸用大型壷


[粘土水簸用大型壷の画像]
粘土水簸用大型壷

大きさ 高さ99cm、直径82cm
時期 紀元前3000年頃
出土遺跡 イラク、テル・サラサート5号丘R3
履歴 1966年、東京大学イラク・イラン遺跡調査団
所蔵 東京大学総合研究博物館 考古美術部門

テル・サラサートは、 五つの丘からなる北メソポタミアの考古学遺跡である。 この土器は5号丘と名付けられた高さ3m、 直径が50mに満たない小さな丘から出土した。 ニネヴェ5期といわれる時期のものである。

土器は内径5.5mほどの円形の建物の中で見つかった。 この建物は土器作りの工房であったらしく、 中には直径約3mの土器焼き窯がしつらえてあった。 窯の脇には、数点の大型壷が床面から口を出すように埋め込まれていた。 本展示品は、そのうちの一点である。 そこに直径5cmほどの穴が開いている点に特徴がある。 おそらく粘土を水簸 (すいひ) するための装置であったと考えられる。 すなわち、中に水をためて粘土を溶かすと、砂などのきょう雑物は沈澱し、 水は下の穴から流れ出す。上層には良質な粘土がたまるという仕組みである。

ニネヴェ5期には、 きわめて良質な粘土でつくられた灰色の小型土器が使われていた。 ロクロで整形し、刻文や赤紫の彩文を施して製作されたものである。 その粘土を得るために、こうした大型壷が使われたのだろう。 精製の小型土器とは違い、 このような実用品は粘土板を貼りあわせる簡便な方法で作られている。 器形も必ずしも左右対称ではない。高さ99cm、直径82cm。

(西秋 良宏)


[編者注] この展示内容に関する最新情報や関連資料等は、随時、 東京大学総合研究博物館のインターネットサーバ上の 以下のアドレスで公開、提供していきます。

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