本郷キャンパス配置図復元 東京大学の年度便覧巻末に残されている本郷キャンパス建物配置図(全23枚)をデジタル処理し、構内配置の変遷を視覚的に再現する試みを行った。この事業は東京大学と株式会社日立製作所の共同研究の成果のひとつであり、新開発のデジタル・イメージ・システム(DIS)技術の可能性を探るものである。 画像処理の対象とした構内建物配置図は都合23枚、明治11(1878)年から昭和45(1970)年に至るあいだのものである。各図には各時期の東大構内の地勢、建物配置、施設名称などが記されている。これらの図面情報に以下のような特殊デジタル処理を施すことで、紙上の情報では得られなかった建物配置図の連続的な展開を取り出すことができた。 [1]時間相の重層化——通時的な変化を表示する。 建物配置図間で変わった部分だけを表示できるよう、各図に対して回転や変形などいくつかの画像処理を複合し、時間軸補正処理を行った。この作業を行うにあたっては、変化の無い地形や建物を基準とし、それらを基に配置図を時間軸方向に並べ、配置図間の差分を補正した。こうしてできたすべての配置図を、表示中の画像がフェイド・アウトし次の画像がフェイド・インする「ディゾルブ」という表示効果を用いて時代順に重層化する。すると、画面上には地勢や建物の変遷するさまが有機的な連続性をもって現れる。 なお、時間軸補正処理を行う中で、構内の建物の配置を示すという同じ目的で作成されているはずであるにも拘わらず、建物配置図の向きが時代で違ったり、建物配置図の縮尺比率や精度にぱらつきが見られるなど、時代ごとに作図方法や作図理念に変化のあることも判った。このため、一般の回転・変形処理技術では変化部分を抽出するための重合処理が行えず、デジタル・イメージ・システム(DIS)の特殊な時間軸補正処理が必要となった。 [2]写真とのリンク——地勢や建物の外観を表示する。 地勢や建物を捉えた写其へのリンク情報を各建物配置図の然るべき場所に埋め込み、リンク設定を表示するリンクマークを建物配置図上に表示した。利用者はリンクマークを選択することで、建物配置図上の地形や建物に対応する東京大学所蔵の写真を画面に呼び出し、学内の仮想散策を楽しむことができる。 [3]図面の立体化——単色の配置図に色を賦し立体的に表示する。 単色の建物配置図をより見やすくするために、地形や建物が浮き出して見えるようにした。また地勢や建物を識別しやすくするために、地面に対してはグラデーションのかかった色付けを行い、建物に対しては学部ごとの色分け分類を行った。さらに学部ごとに建物の名前を付加し、学部を選択すると建物の名前が見やすく表示されるようにした。 この正体化と色分け処理により古い単色配置図が新しく変わる。この手法は古地図などの複合的な情報を現代のニーズに応えるものへ再生させる上で有効に働くものと思われる。 以上、3つの処理により得られた情報を建物配置図に付加することにより、建物配置図を中心に多角的な情報を利用者がインターラクティヴに操作できるようにした。(西野・神内) |
前頁へ | 表紙に戻る | 次頁へ |