京大学本郷キャンパスは、かつての加賀百万石、前田家本郷邸跡につくられています。この展示は、近年のキャンパス再開発とそれにともなう発掘調査によって掘り出された加賀藩関係の歴史的文化財を、一堂に公開する初めての試みです。展示では、本郷邸のしくみとそこで繰り広げられた前田家の生活・文化を発掘の成果 をもって再現し、江戸の巨大大名屋敷の構造と機能を具体的に考察します。また、赤門や心字池、井戸、石垣など地上にみえる加賀藩ゆかりの構築物をマッピングし、学内に残る江戸の屋敷空間そのものも展示場にしたいと考えています。 江戸考古学の面白さの一つは、文献史料や絵図などから類推されていたことがらを、発掘調査によって検証したり書き換えたりできることにあります。本郷邸跡からも、1629年の徳川秀忠、家光らの御成時に用いたと思われる食器類(医学部付属病院地点)、あるいは1827年に徳川家から嫁ぎ赤門を出入りの門とした溶姫の御殿(総合研究棟地点)など、歴史的によく知られた人物・事件にかかわる遺構・遺物が数多く出土しており、その分析が江戸学をいっそう豊かなものにしつつあります。 豪壮な建築と豪華な内装、調度品で市中に名の聞こえた本郷邸は江戸時代、将軍家から町人まで多くの人々が訪れる名所でした。ここが東京大学に譲られて120余年、長らく地中に埋もれていた加賀殿の御屋敷。発掘と江戸考古学の成果 を借りてそれを復活させ、今一度訪れてみようというのが、展示タイトルにこめられた意図です。 江戸考古学の歴史は浅く、大学構内遺跡発掘の歩みは、そのままその歴史と重なっています。本展は、加賀御殿の内側を見学するだけでなく、開発と江戸ブームにのって突然始まった江戸の考古学が、本郷キャンパスを舞台にして、どこまで育ったのかを検証する機会ともなるでしょう。

金箔瓦 (医学部教育研究棟地点出土、十七世紀)

色絵芙蓉手花籠文皿
(御殿下記念館出土、 十七世紀)

江戸御上屋敷絵図
(金沢市立玉川図書館所蔵清水文庫、 1840年代前半


古九谷皿(中央診療楝地点出土、一七世紀)


再興九谷碗
(御殿下記念館地点 出土、十九世紀)


梅之御殿の御付女中衆住居
(御殿下記念館地点、十九世紀)

溶姫御殿の冷蔵庫遺構(十九世紀)

 

公開講演会「江戸の考古学を語る」※演題・講師等は変更になることもあります。

日時: 平成12年6月10日(土)
  10:30 - 12:00 「江戸の随筆と発掘調査」寺島孝一(東京大学埋蔵文化財調査室)
  13:00 - 14:30 「加賀藩士単身赴任事情」長谷川孝徳(石川県立歴史博物館)
  14:45 - 16:15 「江戸時代の伊万里焼・鍋島焼」大橋康二(佐賀県教育庁)
会場: 経済学部第2教室 / 入場無料
店員: 250名(先着順)
お問い合せ: 東京大学埋蔵文化財調査室(電話)03-5452-5103



 

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