造形素材としての新聞

インスタレーションの試み

日々大量消費される新聞は、また、文字や図像の印刷された紙でもある。美術家はこれら「刷られた紙」をレディ・メイド(既製)の素材として利用する。そのことは、新聞紙を支持体に貼り「パピエ・コレ」(貼り絵)を制作することで、二十世紀の新しい表現手法を開拓したピカソのことを思い出すだけで充分であろう。  新聞をただの消費財や生活財と見るか、あるいは貴重な歴史財と見るか、さらにまた魅力に富む表現財と見るか——新聞は情報媒体であると同時に、印刷された紙であり、それを見るわれわれの眼差しに応じて、多様な「貌」を顕わにする。だから興味は尽きないのである。

12. エントランス・ピース

新聞に用いられる用紙には、現代の製紙技術の粋が結集されている。軽くて、薄くて、しかも裏映りがせず、癖がなくて破れにくい。そうしたハイテク用紙は、直径一メートルのロール状に製紙され、その重さは二トン、総延長にして十キロメートルになる。

13. 日刊紙『フランクフルター・ツァイトゥング(フランクフルト新聞)』一山

第六九年一号より、一九二五年一月一日発行分より 
フランクフルト
Frankfurter Zeitung No.1, 69th Year, 1 January 1925 Frankfurt 8pp., 560 x 390
一九二〇年代ドイツを代表する自由主義的な新聞。一九二二年ヒトラーは国民を「搾取する財界首脳部の声」を代弁する新聞として名指しで批判し、以後、ナチ党機関紙「フェルキッシャー・ベオーバハター」は機会あるごとにそれを攻撃の標的とした。本史料には「穂積八束博士記念資金購入」の朱印、「法学部研究室図書印」の朱印、「東京帝国大学図書印」の朱印が押されている。(旧)新聞研究所で廃棄処分されたようで、古書店の倉庫に眠っていたものを博物館が回収した。マイクロフィルムの登場が、オリジナル史料を廃棄に追いやったのだろう。

14.日刊紙『フェルキッシャー・ベオーバハター』ベルリン版一括り

一九四一年三月−六月分
旧中央公論社出版文化研究室(東京丸ノ内)コレクション


Vokischer Beobachter : Berliner Ausgabe March-June 1941 Provenance : Collection of The Shuppan-Bunka-Kenkyusho, Chuo-Koron-sha, Marunouchi, Tokyo

 

15.日刊紙『イル・ジョルナーレ・ディタリア』一括り

一九四一年一月−三月分
旧中央公論社出版文化研究室(東京丸ノ内)コレクション
Il Giornale d'Italia January-March 1941 Provenance : Collection of The Shuppan-Bunka-Kenkyusho, Chuo-Koron-sha, Marunouchi, Tokyo

 

16.日刊紙『プラウダ』一括り

一九四一年一月−四月発行分と一九四一年一二月発行分
旧中央公論社出版文化研究室(東京丸ノ内)コレクション
Pravda(Truth) January-April 1941 & December 1941 Provenance : Collection of The Shuppan-Bunka-Kenkyusho, Chuo-Koron-sha, Marunouchi, Tokyo

 

 

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