編集後記




 時を経て残された物が、後世にどのような命運をたどるのかは当事者にも到底解らない出来事だ。東京大学総合研究博物館の収蔵庫に大切に保存されていた試料と、秋田大学の博物館に保存されていた膨大なノート。一度は距離を隔てていたものたちが本来あった状態で会する機会を得る。これだけでも充分にドラマチックな展開だが、それは科学者の研究の過程で導かれた事象のひとつであり、地道に続けられる研究の過程には更に多様な展開が見られ、それらを見聞きする者の興味は尽きない。

 従来、科学者達の論文集として編集されることの多い大学の展覧会図録だが、今回の編集では、上記のような渡辺武男を軸とした一連のストーリーが様々な研究課題に縦横の流れを必然とした。最初の項から読み下すことで、研究の流れも理解できる本書は、展覧会の図録として展示内容をより深く理解して戴く目的を合わせ持って編集されている。

 今回の編集にあたり、限られた時間に最良の原稿、図版等の準備に奔走された方々に賛辞を送り、今後の更なる研究と成果を願う。



2004年1月  編集人  杉谷 進



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