西郷星地落人民之口
東京大学法学部附属明治新聞雑誌文庫蔵
西郷星が地に落ちたということは、自刃のニュースを受けたものであろう。この錦絵でも、さまざまな職業の人々の西南戦争という出来ごととのかかわりをとりあげている。
西郷星地落人民之口
楠正成星/「よくきけよ西郷吉之助御身ハ/わかいじぶんから天朝をおもひ/忠義無一にてミなかんしんせぬ/ものなくことに正三位までにいたり/われわれはじめよろこび勤王一等/なりとおもひのほかこのたびの/ぼうきよハなにごとぞいくさハ/われわれよりつらハあれどぞくの/名義ハ万世までのこるハアア/清麻呂君かなしいかなしい
山師/「西郷さんもつとがまんしていくさを/やつてくだされバいいのにここが/かんじんさうばがさがると/たいへんたいへんしんだいかぎりを/してもおいつかねへエエエエ/ざんねんざんねん
おいらん/「ああいそが/しいこといそがしいこと一トばんに二十/人ぐらゐのまハしチヨツ巡査の/御方なら日夜ハおろかねるめも/ねずにおるふしきにくがいもいとひま/せんしかしいくさがおさまれハミなはんが/おくにへおかへりなんすのでこころぼそい/いくさがどんどんあれバいいんでありんす
小ぞう/「いくさがもつとあれバいい店ハいそがしいし/ふくハとんとんミしんでしたてそのいそがしいまぎれにぜにをもらつて使の/たびにかひくひができるこんないい事ハ/あるまいがアア小ぞうみやうりが/つきたのかどうぞいくさの/あるやうにしておくれ
こんさい/「西郷大明神さま西郷大明神さまあれほどおねがひ申上/ますいくさがながくだんなハうちじにを/なさつたらかわいい男とそひ/ぶしをしてきかい■おるハもち/ろんそうなりますれバかねの/とりゐオツトわあしハうそつきで/とりゐがありません/かねかしにでもなり/ませうこんや諸工人「このあいだうちのいそ/がしさおふくろも大きに/よろこんでゐたがいくさが/おさまれバ/だんだん/ひまになる▲/▲ことかな/ハぬもうすこし/どんどんやつて/くだされバ/いいのに
中
はいたつ/「貴社なぞハせんそうからいそがしいこといそがしいこと/ぼくも同きりがましはいたつハほねが/をれるがイヤもうかねがはいるのが/うれしいなんでも新聞というからめづらしく/づどんとめさきがかわらなけれバ/いかねへ
賊魁 西郷隆盛 輔首 新政厚徳
清正/「西郷がしろをかこんで/二十四度セめるしの原/ろうぜうをしてふせぐは谷君の/はたらきさすが陸軍になたけ/又一ツにハわがはいのきづきし城ハいかが西郷氏どうだネヘエヘン
けん下の百姓/「西郷が/わしらのけん下/へおしこんできて/でんちでんはたハふミあらされうちハ/やかれてしまひ/ほんにミづ/のミ百せうに/なつてしまつた/くやしいくやしい
ばばア/「おらがたつたひとりのまごをかハい■■/たのしミにしているうちおかミから兵たいに/めされなきのなミだで出たがこんどの/いくさにしんでしまつたこれも/西郷のおかげであるくやしくツてならぬアアかなしいやかなしいや/
左
平将門星/「アラうれしやうれしやよろこ/ばしやおとにきこへし/西郷をとふとふぞくに/引すりこミうち死を/させたうへからハ/身どももぞくの名ハ/こうせいまでこうせいまで
紀友/「おれも九州でハながく/たたかひミつ仲はじめなやまし/名を万代にのこしたが/西郷氏にハとても/およばん
商人/「わたくしどもはじめしよ商人は/西郷がとんだことをしだした/からあきなひはひまだし/ゆうづうハきかずイヤイヤ/もうよわきりました/このいくさがながくつづい/てハひものになるところ/だツた
おツかあ/「ちやんやはやくこないか/西郷ぼしがおちたおちたうちじにの/とき首がないといふはなしだが/そらの中ハ大へん大へんからだが/かくれてくびばかり/ミへる
シイレ画工「ぼくなんぞハてんぐをいふが/人がかくものをもらてこんにハ/へいこうへいこう家内おほでハ/あるしうまい酒一ツぱい/のむこともならぬモウ/てんぐもよそふエヘンエヘン
ねこ/「わたいらもいくさからすこしも/おきやくハなしぜいハおさめ/なくツてハはらずおツかあ/にハ小ごとをきくし/こんなばかばかしい/事ハない
大工/「おれなんざアせんそうこのかた/ひまなことひまなこと火事があつても/たれもふしんハせずイヤもう/よわりきったぞペランメイ車ひき/「イヤモウひまで/ひまでいくさ/からこまな/きる車のはだいハたまるし/おやかたにハせつかれ/がきにハなかれ/このとふり/やせたいま/いましい |