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[Tokyo Continuum]と
「インフォーメーション・スケープ」

POWEW UNIT STUDIO
KEI’ICHI IRIE


1996年のベネチア・ビエンアーレに、一連の連続構造体のスケッチ[Tokyo Continuum]を提出した。これらは当初、実際の都市の中にある交通のノード(結節点)をメタファーとしながら、ネットワーク上のコミュニケーションの空間を、データベースの中の都市のように表したものだった。しかしその後、Andreas Shneiderと共にデータベースの構造と、そのナビゲーションのためのツールの研究を進めてゆくうちに、[Tokyo Continuum]をその部分的、建築的な表象とするような、さらにグローバルな規模の「インフォーメーション・スケープ」を構想することになった。現在、このプロジェクトについては現在、人工知能の研究者、プログラム・エンジニア、アーティスト、デザイナーなどの協力を得ながら、さらに具体的に研究を進めようとしている。[Tokyo Continuum]として提出した都市的、建築的な空間様態は、この「インフォーメーション・スケープ」の中では「サイト」「ロケーション」「リンク」と名付けられた各データ階層の具体的イメージとなっている。

以下は、「インフォーメーション・スケープ」についての概要である。

データベースとは、そこに集められたデータの明白なセットである必要はなく、むしろある種の手段によってアクセス可能なデータを含んだ概念としてのフレームワークである。その意味で「データベース」なる言葉は個人的なノートブックから、都市のようにそれ自体の内容をともなう特定の空間のようなものにも適用する事が出来る。「インフォーメーション・スケープ」はこのような考えに基づくデータベースのプロトタイプであり、以下にその内容、応用、構造、インターフェイスを概説する。

デザイン画
デザイン画
デザイン画
デザイン画
デザイン画

1.「内容」

「インフォーメーション・スケープ」はユーザーからの特定の「視点」に対して2次元ないし3次元の環境として表現されるダイナミックに生成されるデータ形態である。これは「ユーザー中心」のシステムの構築を目標として、ユーザーによる適合やカスタマイジングを最大限にサポートする。

「インフォーメーション・スケープ」はあらゆる種類のデータ、アルゴリズムが含まれる環境であり、特定の地域性に限定されていない。それは、内容のクロス・リファレンスのためのフリー・フローティングな環境を提供する。

2.「応用」

「インフォーメーション・スケープ」はデータの収蔵、読み込み、操作、入力のための環境である。それらはマルチ・ユーザー・インタラクションのための領域をも含んでいる。大きなスケールにおいては、テレビ放送のための「バーチャル・スタジオ」装置のような、現実のイベントのバックグラウンド/ステージを構成することが可能である。そこではユーザーはネットワークに構成される複雑なデータベースから取り出された多様なアイテムと、実物大のインタラクションを行う。小さなスケールにおいては、「インフォーメーション・スケープ」とのインターフェイスは、ユーザーの記憶パターンに適合し、メンタル・モデルを形成するようなデータ管理の道具である。このように「インフォーメーション・スケープ」は現実世界の環境と混じり合うことが可能であり、リアルタイム・データに基づいて現実世界のオリエンテーションをアシストする事ができる。

3.「構造」

「インフォーメーション・スケープ」はフラクタル・ヒエラルキーで構成され、これらのヒエラルキーの各下位レベルはいつでもあらたなヒエラルキー・セットのスタート・レベルとなりうる。以下はそのヒエラルキーを構成する各レベルの解説である。

3-1 ユニバース:

「インフォーメーション・スケープ」のネットワークはユニバース群として表され、各ユーザーは特定のユニバース内を移動し、複数のユーザー間でユニバースをシェアしている。またユニバースはそれ自体としては「無-形態」フォーム・レスなものである。ユニバースはワールド(サブ・ネットワーク)の集合である。ユーザーはユニバースの中にいくつかのワールドを創造する事ができ、それらをアクセス、モディファイ可能である。

3-2 ワールド:

ワールドはサイト(サブ・ネットワーク)の集合である。複数のユーザーがサイトをシェアし、あるいはサイトの特性をシェアしながらデータ交換をおこなう。3次元空間内ではワールドはジオデシック球体として表現される。この球体は均一な三角測量に基づいていて、サイト群はいかなる極的なバイアス(東西南北)もなしに分配される。このようなジオメトリーは3次元から2次元へ、あるいはその逆の変換を容易にするだろう。

3-3 サイト:

サイトはロケーション(サブ・ネットワーク)の集合である。都市のように、サイトは自らの成長パターンと潜在能力を持っており、それらはサイトの内容、ロケーションの機能、彼らが関わる交通などに拠っている。サイトは複数のユーザー間、ワールド間でシェアされ、あるいはデータ交換を行う。

3-4 ロケーション:

ロケーションはサイトを構成する単位であり、一定のリンク群の表象である。ロケーションはサイト内でのオリエンテーションのための重要なマークとして、ユーザーが容易に移動することが出来、彼自身のシェーマや組織にフィットさせるために取り替え、再構築できるものとする。ロケーションは複数のユーザー間、ワールド間、サイト間でシェアされ、あるいはデータ交換を行う。

3-5 リンク:

ユーザーは、スタティックなデータや実行可能なプログラムなどのデータベースのアイテムに、リンクを通じてアクセスする。リンクはユーザーにとって最も容易に操作可能な実体であり、これによってワールド、サイト、ロケーション間の移動、パーソナル・リファレンスの為の付注、パブリック・リファレンスのためのコメントや評価などが可能である。リンクは複数のユーザー間、ワールド間、サイト間、ロケーション間でシェアされ、あるいはデータ交換を行う。

4. 3つの「インターフェイス」

「インフォーメーション・スケープ」は3種類のインターフェイスをもつ。

4-1 分離型:

デタッチド・インターフェイス

ユーザーとインターフェイスが3次元的な関係を構成する現実世界の環境。もっとも使い慣れた種類のインターフェイス。

4-2 没頭型:

イマーシブ・インターフェイス

ユーザーの環境として機能するとともに、インターフェイスでもある。ユーザー環境/インターフェイスの2元的な関係が、現実世界への直接的なリンクをもたないバーチャル球体を形成する。典型的な例として、アイ・マウンテッド・ディスプレイ、シームレスにデータがマッピングされたドームなど。

4-3 混合型:

ハイブリッド・インターフェイス

現実世界とバーチャル環境とがスーパーインポウズされた環境であり、ユーザーにたくさんのインタラクションを提供する。たとえば、バーチャルスペースに混じりあった現実世界のオブジェクトの特性のエンコード/デコードの操作、これらのオブジェクトの物理特性の容量を超えた機能など。

5. インターフェイスの3つの基本

機能

5-1「ビュー」:

3種のインターフェイスのタイプはいずれも2次元、3次元的に「情報空間」を表現する。

  1. 2次元的シーン:アイソメトリックな表現、 情報のダイアグラム的な表現(たとえば地図、チャート、リストなど)。
  2. 3次元的シーン:一つの消失点にむけて計算される。

5-2「ナビゲート」:

3つのインターフェイスにはそれぞれ特定のナビゲーション・ツールがある。

  1. アソシエーション・モデュール: 目的/ゴールの形式、内容的なフィードバック
  2. パイロット・モデュール: 視野のコントロール、構造的フィードバック
  3. .リンキング・モデュール: 他のメディアへのリンク、コンテクスト上の統合 各々に以下の機能が備わっている。 目的/ゴールの形式、内容的なフィードバック 視野のコントロール、構造的フィードバック 他のメディアへのリンク、コンテクストの統合

5-3「インタラクティング」:

「インフォ・スペース」では3種類のインタラクトがある。

  1. 意図的なインタラクション
  2. 自動化されたもの、データによるドライブ
  3. コンテクストによるドライブ

これらの各タイプはある特定のソース、「シングル・ユーザー」、またはいかなるソースの配列など、物理的にも構造的にも本質的に異なったものを対象とすることができる。


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