[The University Museum]

パーソナライズ


デジタルミュージアムでは訪れた人が多様なデジタル技術により 従来の博物館に比較してより多くの、 しかもその人の目的にあった情報を得ること、 体験することが出来るように工夫されている。 デジタルミュージアムの受付では 電子手帳風の小型のコンピュータが渡される。 このような携帯端末は PDA (Personal Digital Assistant) と呼ばれるが、 デジタルミュージアムのそれは Personalized Digital Assistant といえるものである。 PDAが渡されるときにはその人の属性情報 (利用言語や年齢、ハンディキャップなど) や興味内容、 目的などの情報をプログラムしたスーパーIDカード (形状はカード、チップ、バッジなど) が組みこまれる。 このPDAを持って展示物の前にいくと、展示に関する解説や関連情報などを PDAの画面に表示したり音声でガイドしてくれる。 子供であれば平易な解説、弱視の人なら大きい文字で、 英語の解説が欲しい人には英語でというように 持っている人に合った解説を行うことが出来る。

[日本語表示の画像]
日本語で表示

[英語表示の画像]
英語で表示

[大きい文字で表示の画像]
大きい文字で表示

PDA端末のパーソナライズ機構を使うことにより、 日本人は日本語で、英国人は英語で、弱視の方は大きい文字で 読むことが出来る。 タッチパネル付き640×480ドットカラーTFT液晶画面、 2スロットのPCMCIA、2チャンネルのIrDAポートを持ち、 バッテリ駆動可能なPDA。マルチウインドウ、マルチタスクの BTRONを搭載し、通信をしながら同時に展示画面を表示したり 利用者からの指示を受け付けることができる。
(端末製作・提供:矢崎総業株式会社)

親子連れの場合には子には図示などで興味をひかせ、 親には子供に説明をしてあげられるようなヒントの情報を出すという きめ細かな演出も可能である。

一般に博物館の見学の終了後にアンケートを取る場合が多いが、 デジタルミュージアムでは最初に属性情報や興味、 見学時間の目標などについてのアンケートを取り、 スーパーIDカードをつくる。そのときにどのような順路でみていくと 興味深く体験出来るかモデルルートマップをつくる。 また、その場所場所で PDA を使い感想を入れてもらったり Q & Aなどを行うため、 強い印象のあるうちに来訪者の情報を得ることが出来る。 このようにして得た情報の方が最後にアンケートをとるよりも、 有効な情報と考えることができ後日の展示企画に生かすことが出来る。

スーパーIDカードは、どのような属性を持った人が、どこにいるかを デジタルミージアムのサーバーに伝えることが出来る装置である。 これによって、展示の演出や電子説明パネルの内容を来訪者に応じて 変化させることが出来る。 たとえば展示室が混んでいる場合は、 複数人集まるまでデモンストレーションを始めず、 逆にすいている場合は来訪者が展示室を出ていかないうちに デモンストレーションを始めるというコントロールを行うことが出来る。

個人あるいは集団の属性情報により PDA や展示の表示を変えるメカニズムは メディア変換技術である。 すなわち、伝えたい情報の内容を属性に合わせて 表現するメディアに合わせて変換する。 たとえばオリジナルの日本語の説明文を根幹として、 外国語に翻訳して表示、音声で発声、大きな文字で表示、 ピンディスプレイに点字で表示など 原理的には変換処理によって目的にあった表現形態にすることが出来る。

(坂村 健)


[編者注] この展示内容に関する最新情報や関連資料等は、随時、 東京大学総合研究博物館のインターネットサーバ上の 以下のアドレスで公開、提供していきます。

https://www.um.u-tokyo.ac.jp/DM_CD/DM_TECH/PERSONAL/HOME.HTM


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