ネオテニーとは?



 「ヒトの特徴として、とにかく頭が大きく顔が小さい。これは、ほかのサル類や動物に照らし合わせると、いうなれば幼児の状態が大人期にまで残っていることに相当する」、と長年指摘されてきました。ネオテニーは「幼形成熟」と訳され、成長期のままの状態で性的成熟に達し、大人になってしまうことをいいます。人類進化においては、成長速度が全体として遅滞する方向に変化したことで、祖先の幼児期の状態が大人にまで残ってしまうのだろう、という考えです。専門家の中でも、従来から注目されてきた学説ですが、私にはピンときません。
 逆に、頭にしろ、顔にしろ、各々の進化の経過があって、たまたま双方のバランスが、祖先状態の「幼形」に表面的に似てしまったと考えることができます。

そのほうがより現実的と思います。脳の大きさはホモ属が出現した250万年前以後にどんどん大きくなって行きましたが、実際には幼形化どころか、逆に過生長している訳です。顔面の縮小は、200万年前以後の原人で初めて目立つようになり、以後どんどん進行しました。ですが、成長の調節因子の変化により、顔面部が祖先の大人の状態に達しないのではなく、単に目指すべき歯と顎の大きさが小さくなっただけのことでしょう。例えば歯が小さいのは成長遅滞があるからではなく、歯の発生初期の細胞分裂の程度の違いから大きさが小さくなるように、遺伝的に規定されているに違いありません。